マインドフルネス特性が高いほど、ストレスレベルが低い
本研究では、初対面の2人組を対象にストレスのかかる協力タスクをしてもらう実験を行いました。
研究に参加したのはラドバウド大学に通う女学生134名です。
(研究者いわく、性別の違いが結果に及ぼす影響を最小限に抑えるために今回はひとまず女性だけを対象にしたという)
お互いに初対面の女学生2人をペアとし、計67組が実験に参加しています。
参加者はまず、マインドフルネス特性の高さを評価するアンケート調査に回答しました。
そして次に、初対面のパートナーと協力して、2つのストレスのかかる作業を行います。
1つはお互いに至近距離(わずか27センチ)で向かい合って、自己紹介をすることでした。
それが終わると、自己紹介中に感じたストレスレベルを個別に報告してもらいます。
もう1つは、ジョイント・コーディネーション・タスク(Joint coordination task)と呼ばれるストレス課題です。
これは一人が小さな穴のあいた輪っかを持ち、もう一人がその穴にポインター(指し棒)を通して、輪っかの縁に触れないよう維持するというものです。
タスク終了後、参加者は初対面のパートナーとの交流(協力タスク)がどれほど好ましかったか、パートナーのタスクに対する注意力がどれだけ高かったか、またパートナーと快適に協力できたかなどを評価しました。
その結果、マインドフルネス特性が高い人ほど、見知らぬ相手との交流で受けるストレスレベルが有意に低いことが判明したのです。
加えて、パートナーとの交流を好ましく思うだけでなく、相手の注意力やミスに対処する能力が高いと感じていました。
つまり、マインドフルネス特性の高い人は、初対面の相手を好意的に捉える傾向が強かったのです。
これと反対に、マインドフルネス特性の低い人ほど、見知らぬ相手とのタスクに強いストレスを受けていました。
こうしてみるとマインドフルネス特性の高い人というのは、非常に付き合いやすいいい人であるという印象を受けます。
そうなると当然、マインドフルネス特性の高い人とペアを組んだ方が、自分の感じるストレスは減るように思えます。
しかし興味深いことにマインドフルネス特性の高い人とペアになっても、自分が感じるストレスレベルには影響しないことが示されました。
つまり、パートナーのマインドフルネス特性が高いからといって自分のストレスレベルが下がったり、逆に相手のマインドフルネス特性が低いからといってストレスレベルが高まることはなかったのです。
このことから、マインドフルネス特性の高さは「当の本人がストレスを感じにくくなる」という点でプラスに働くが、交流する相手のストレスレベルを下げたり、相手に好意的に思ってもらう効果はあまりないと見られます。
「あまりない」と注意書きしたのは、それでも参加者のうちに、マインドフルネス特性の低いパートナーに比べて、その特性の高いパートナーとの交流を好ましく感じる傾向がわずかに見られたためです。
その理由は定かでありませんが、考えてみれば、マインドフルネス特性の高い人は相手との交流を好ましく思っているわけですから、その好意的な心情が言動に表れ、相手はそれを無意識的に心地よく感じていたのかもしれません。
皆さんも「ああ、この人、私に苛ついてるな〜」と感じたら、相手との交流は心から楽しめませんよね。
今回の調査結果ではこの点が明確化はされておらずとも、わずかに参加者の報告に表れたと考えられます。
とはいえチームは、今回の研究が若い女性だけを対象としている点で限界があると注意します。
次のステップとして、男性や他の年齢層を含む人々を対象とした調査を進めていく予定です。