4細胞でも2億年間ハッピーな「しあわせ藻」
「シアワセモ(Tetrabaena socialis)」は、その名のとおり幸運の四葉のクローバー思わせる外見をしたユニークな存在です。
わずか4細胞から成るこの生物は、世界で最も小さな多細胞生物の一つとして知られています。
シアワセモたちは4個の細胞に生えた小さな鞭毛を使って遊泳することが可能であり、しばしばクルクルと回転しながら光合成を行っている様子が観察されています。
しかしシアワセモの興味深い点は見かけだけではありません。
これまでの研究で、最初の多細胞生物が誕生したのが10億年前、生命の多様化が進んだカンブリア爆発が起きたのが5億4000万年前であることが知られています。
しかしシアワセモが多細胞生命に進化したのは2億年前です。
2億年前と言えば、三畳紀からジュラ紀にあたり、この頃の地球は三畳紀末期の大量絶滅(T-J境界)を抜けて恐竜の巨大化が進んだ時期にあたります。
(※三畳紀末期には火山や隕石などの要因により全ての生物種の76%が絶滅しており、地球の歴史における5つの「大量絶滅」事件の1つにあたり、地質学的にはT-J境界を形成しています)
そんな時期にシアワセモたちはひっそりと、単細胞生物から多細胞生物への独自の進化を起こしていました。
つまりシアワセモは多細胞生物の界隈ではかなりの「新参者」にあたるわけです。
実際、シアワセモが属する緑藻の群体性ボルボックス目は単細胞生物から多細胞生物の中間段階にあたる種が多数存在しています。
そのためシアワセモは、生命が多細胞化するときに何が起こるかを研究する、絶好の生物となっています。
しかし生物学においては、細胞がくっついているだけでは多細胞化したとみなされません。
いったい何を根拠にシアワセモは世界最小の多細胞生物の座を勝ち取ったのでしょうか?