ネアンデルタール人は「朝型人間」だった可能性
チームはネアンデルタール人と現生人類のDNAを調べたデータセットを総合的に分析し、概日リズムに関わる遺伝子を246セット特定。
さらに、現代人とネアンデルタール人のそれぞれに特異的に進化している遺伝子が数百個見つかりました。
また両者の間で異なる制御を受けていると見られる16の概日リズムの遺伝子を特定しています。
これらの結果から、現代人とネアンデルタール人とでは明らかに概日リズムに機能的な差があることが示されました。
では、そのネアンデルタール人の遺伝子は現代人の中でどのような特性を見せるのでしょうか?
それを調べるべく、チームは約50万人分の遺伝子データや健康状態が登録されている「UKバイオバンク」をもとに調査しました。
その結果、面白いことに、ネアンデルタール由来の概日リズムの遺伝子を多く持っている人ほど、早寝早起きの特性が強くなる傾向が判明したのです。
つまり、ネアンデルタールの概日リズムに関わる遺伝子を受け継ぐと「朝型人間」になりやすいことが示唆されました。
となるとネアンデルタール人は皆、朝型人間だった可能性が浮上しますが、これは一体なぜでしょうか?
朝型の方が「日照時間の変化」に柔軟に適応できた?
チームはこの理由について、朝型の概日リズムが高緯度地域での生活に適応するのに有益だったからではないかと考えます。
これまでの研究で、朝型は概日リズムの周期(生体活動の1サイクルを完了するのにかかる時間)が短いことと関係していることが分かっています。
サイクルが短い人はサイクルの長い人に比べて、夜は早く眠くなり、朝も体内時計が前倒して始まるので、無理もなく自然と早寝早起きの体質になるのです。
研究者らは、こうした概日リズムのサイクルが短い方が、長い方に比べて、季節ごとに1日の日照時間が大きく変わる高緯度環境に柔軟に適応できた可能性が高いと指摘しました。
そしてこのネアンデルタール人の遺伝子は、新たに高緯度地域に移住した現生人類にとっても有益だったため、今日まで淘汰されずに残されてきたと予想できます。
よって早寝早起きが得意な人の中には、ネアンデルタール人の遺伝子が生きているかもしれません。
他方で、今回の研究はUKバイオバンクに登録されたイギリス在住の人々のみを対象としており、必ずしも全ての現代人に当てはまるとは限りません。
そこでチームは今後、世界各地の遺伝子データベースをもとに、同じ結果が他の人種にも見られるかどうかを調べたいと考えています。