トナカイの目は冬になると「青色」に変わる
シカ科トナカイ属の1種である「トナカイ(学名: Rangifer tarandus)」は、北アメリカのアラスカやカナダ、ロシア、フィンランドを含む北極圏に分布しています。
これまでの研究で、トナカイは夏と冬では目の色が異なり、金色から青色に変わることが分かっていました。
季節ごとに目の色を変えられる哺乳類はトナカイだけです。
彼らが生息する北極圏は冬になると日照時間が極端に短くなり、太陽の光がほとんど差さない暗い日々が続きます。
専門家によると、この状態は「空に巨大なフィルターがかかっている」ようなもので、夏に降り注ぐオレンジ色の光が遮られ、薄い青色の光だけを通過させるようになるという。
この貴重な青い光を取りこぼさないようトナカイが採った戦略が「目を青色に変える」ことでした。
正確にいうと、青色に変わっているのは目の奥の網膜の後ろにある「輝板(タペタム)」という層です。
普通、光は網膜によって吸収されますが、目の中に入った光が網膜をすり抜けてしまうことがあります。
光を取りこぼしてしまうとその分、視界も暗くなりますが、輝板はそのすり抜けた光を跳ね返し、もう一度網膜に吸収させる働きをするのです。
そのためトナカイは真冬の北極圏に差す青い光をうまく吸収するために目の色を変えていると考えられています。
しかしここにもう一つ深い謎があります。
真冬に青くなったトナカイの目はなぜか紫外線まで検出できるようになるのです。
以前の研究では、青色の輝板は目の中に入った紫外線の60%を跳ね返して、網膜に吸収させられることが判明しています。
ところが専門家たちは、どうしてトナカイが真冬に紫外線を見る必要があるのかが分かりませんでした。
そこでダートマス大とセント・アンドリューズ大の研究チームは、野生のトナカイが生息するスコットランド高地で調査を実施。
その結果、謎の答えはトナカイの大好物である「ハナゴケ」に隠されていたのです。