「両性愛行動に関連した遺伝子」を持つ男性は、リスクを冒す傾向があり、子供をたくさん作る
分析の結果、バイセクシャルに関連した遺伝子が存在していることが判明します。
また平均的な子供の数は異性愛者は1.8人であるのに対して、バイセクシャルは1.2人、ホモセクシャルは0.25人と子孫の数が少なくなることがわかりました。
この結果だけをみれば、バイセクシャルに関連した遺伝子には子供の数を減らす効果があると思えるでしょう。
しかし実際はより複雑でした。
研究でさまざまなパターンの組み合わせを調べたところ、バイセクシャル遺伝子を受け継ぐ男性が純粋な異性愛者だった場合、平均よりも多くの子供を作る傾向があり、結果としてバイセクシャル遺伝子の保持に役立っていたのです。
(※バイセクシャル遺伝子を受け継いでいても、環境の影響で同性愛には傾かず異性愛となり得ます)
また自分自身を「リスクテイカー(リスクを冒してでも挑戦する人)」だと主張する人は、より多くの子供を作る傾向があり、そうした人々はバイセクシャルに関連した遺伝子を持つ可能性が高いことも明らかになりました。
ジャン氏は、「自己申告によるリスクテイクには、避妊なしの性行為や不特定多数との性行為が含まれている可能性が高く、その結果、より多くの子供が生まれる」と述べています。
そしてこれらの結果について「バイセクシャルに関連した遺伝子を持つ男性は、生殖で有利になり得る」と結論しています。
ジャン氏らの分析と推察は、「どうして同性との性行為に関連した遺伝子が潰えないのか」という長年の疑問の答えを部分的に提出しているように思えます。
つまり、「バイセクシャルに関連した遺伝子」は、リスクを冒す性質も持ち合わせており、この性質が異性愛に対して働いた場合、積極的な生殖を促進し、長年にわたる遺伝子の存続を可能にしたというわけです。
一方で、研究チームは「ホモセクシャルに関連した遺伝子」を持つ男性が異性愛者となった場合は、子供をあまり作らない傾向があることを発見しており、この遺伝子が現れる頻度は、時間の経過と共に徐々に減少すると予想しています。
では、これらの分析結果からすると、今後、両性愛行動は無くならず、同性愛行動は潰えるということでしょうか?
そうではありません。
研究チームは、「人々の行動は、遺伝子要因と環境要因の両方の影響を受ける」ことを強調しています。
実際、同性との性行為を報告する人の割合はここ数十年で増加傾向にあり、研究チームは、これが同性愛に対するよりオープンな社会的風潮を反映したものだと考えています。
今回の研究では、同性への性行為を「バイセクシャル」と「ホモセクシャル」に分けて分析することで、バイセクシャルに関連した遺伝子が持つ生殖的優位性を発見することができました。
こうした研究を重ねていくなら、複雑で答えが出ないように思える「LGBTQ」に関連する問題と原因を、少しずつ紐解いていくことができるのかもしれません。