ナビゲーション能力の高さは「生まれた後の経験」で変わる?
調査では66件の先行研究を集めて、21種類の動物の平均的な空間ナビゲーション能力や生息域での移動範囲などを性別ごとに調べました。
対象とした動物種には人間の他に、チンパンジーやウマ、ネズミ、アナウサギ、ジャイアントパンダ、コツメカワウソ、ヤドクガエル、ザリガニなどが含まれています。
そしてデータ分析の結果、どの種においてもナビゲーション能力と行動範囲の関連性に性差はほとんど見られませんでした。
このことからチームは、男女のナビゲーション能力の違いに進化上の生物学的要因は関係しておらず、性別ごとに生まれつきの特性ではないと述べています。
とはいえ、少なくとも私たち人間においては、男性の方が地理的感覚に優れているという傾向が見られるのも確かです。
では、その原因はどこにあるのでしょうか?
チームは新たな仮説として、「男女ごとの後天的な育成環境に理由があるのではないか」と推測しています。
この考えに基づくと、男性でも女性でも生まれた時点でのナビゲーション能力に差はありません。
しかし男児は一般的に、外で遊び回ったり、自転車で遠くまで行くことが多いため、その中で地理的な方向感覚が発達している可能性があるというのです。
加えてチームは「こうした外出行動は仲間と一緒に行われることが多く、男児はグループ全体でナビゲーション能力を向上させているのではないか」と指摘します。
それに比べると、女児は屋内で遊んだり、家から比較的近い場所で遊んだりという傾向が世界的に強く見られます。
そのため、女性は男性に比べると知らない土地へでかけて動き回るようなナビゲーション能力があまり発達しなかった可能性が高いのです。
しかしながら、結局はこの遊び方の違いも性別ではなく、個人の問題に帰着します。
男児であっても外遊びではなく、屋内で遊ぶのが好きな子もいれば、女児であっても自転車に乗って積極的に遠くまで出かける子もいます。
いずれにせよ、ナビゲーション能力の高さは性別ごとに生まれつきのものではなく、個々人の経験の中で育まれるものである可能性が高いようです。