体を作りながら伸びていくロボット
体を作りながら伸びていくロボット / Credit:Emanuela Del Dottore(IIT)et al., Science Robotics(2024)
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3Dプリンタを内蔵し植物のように「体を作りながら伸びていくロボット」

2024.01.22 Monday

ガードレールに絡みつく「つる植物」や、家の塀や廃ビルの壁に張り付く「ツタ」を見たことがあるでしょう。

あれらの植物は、重力屈性や光屈性という作用で重力に逆らったり光を追いかけて伸びる方向を決定しています。

誰かに逐一指示されたわけではないのに、あらゆる環境に適応し、戦略的に体を成長させていく植物たちには驚かされますが、こうした特性は最新のテクノロジーにも応用可能かもしれません。

最近、イタリア技術研究所(IIT)に所属するエマヌエラ・デル・ドトーレ氏ら研究チームは、そんな植物に触発されたロボット「フィロボット(FiloBot)」を開発しました。

フィロボットはまるで植物のように、光や重力を感知して進行方向を決定し、他の構造物に巻き付きながら体を伸ばしていくことができます。

研究の詳細は、2024年1月17日付の科学誌『Science Robotics』に掲載されました。

Watch a plant-inspired robot grow towards light like a vine https://www.newscientist.com/article/2413133-watch-a-plant-inspired-robot-grow-towards-light-like-a-vine/
A growing soft robot with climbing plant–inspired adaptive behaviors for navigation in unstructured environments https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.adi5908

光や重力を感知して成長する植物たち

あらゆる環境に適応・成長するつる植物たち
あらゆる環境に適応・成長するつる植物たち / Credit:Canva

植物は、視覚も、情報を処理する脳さえも、持っていませんが、森林などの複雑で変化しやすい環境に適応して成長していきます。

例えば彼らは、「光屈性」という性質を持っており、光の方向に向かって成長していきます。

光の刺激を受けた結果、光を受けてない側の成長が促され光の方向に向かう
光の刺激を受けた結果、光を受けてない側の成長が促され光の方向に向かう / Credit:Wikipedia Commons_光屈性

光の刺激を受けると、光を受けていない側の成長が促され、結果として光の方向に向かっていくのです。

また、これとは逆の性質「負の光屈性」を持つ植物も存在します。

例えばつる植物は、大きな木の幹に巻き付いてよじ登っていきますが、木の幹(根元)を見つける際に、光とは逆側に伸びていく性質である「負の光屈性」が役立っていると言われています。

また植物は重力方向を感知して成長方向を調節する性質「重力屈性」もあり、根を地中に向かわせたり、茎を光合成に有利な上方に向かわせたりするのに役立っています。

重力屈性の例。根は重力方向に、茎は重力方向とは逆に伸びる
重力屈性の例。根は重力方向に、茎は重力方向とは逆に伸びる / Credit:Wikipedia Commons_Gravitropism

こうした柔軟性のある性質は、森林だけでなく、人工物であふれる人間社会で生きる植物にも見られており、自然の偉大さと植物の適応力の高さを感じさせます。

もし、これらの性質をロボットに与えることができるなら、「どんな環境にも適応して移動できる自律型ロボット」を生み出すことになるでしょう。

そこで今回、ドトーレ氏ら研究チームは、植物の様々な屈性を模倣したロボットの開発に取り組みました。

次ページ植物のように環境に合わせながら成長していくロボットを開発

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