尿路を進み「尿路結石」を溶かすロボット

尿路結石は、尿の成分が析出して体内で結晶化し、固まりとなったものです。
これらの結石は尿路の中で移動し、特に尿管という狭い空間にさしかかることで、激烈な痛みを引き起こします。
この痛みは突発的で鋭く、時には吐き気や冷や汗を伴うほど強烈です。
現在の治療法には大きく分けて二つ、結石を手術で取り除く方法と、薬を用いて溶かす方法があります。
しかし、経口で与えられる薬は、標的である結石そのものには届きにくく、血流や代謝の過程で有効成分が希釈されてしまうため、十分な効果を得るには時間がかかるのが現状です。
手術で取り除くという大掛かりな方法もできれば避けたいものです。
そこで登場したのが、薬剤を搭載した「磁気小型ロボット」です。
このロボットは、長さ12mm・幅1mmほどの極小フィラメント型で、ゼラチンとエラストマーの混合材料から作られています。
その柔らかさは、人体内を傷つけずに移動するための工夫でもあります。

そして、ロボットの片端には小さな磁石が埋め込まれており、体外から回転磁場を発生させることで、内部の磁石が回転。
その運動がロボットをくねくねと「泳がせる」ように動かし、狭い尿路の中を前進させることができます。
ロボットの動きは超音波画像によって追跡することができ、腎盂と呼ばれる腎臓の内部の空間まで、正確に誘導することが可能です。
目的地に到達した後は、体表に貼付した磁石パッチにより、ロボットをその場に留めておくことができます。
またロボットの内部には尿素分解酵素が搭載されており、尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解することで尿中のpH値を上昇させ、結石を溶解させます。
溶解して小さくなった結石は尿と共に排出されますが、同じように、最終的に役目を終えたロボットも尿と共に排出されます。
では次に、実験での様子を確認してみましょう。