コムギ、ルイセンコはコムギの種を低温処理することによってコムギの性質を変えることができると主張した
コムギ、ルイセンコはコムギの種を低温処理することによってコムギの性質を変えることができると主張した / credit:wikipedia
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まるでオカルト!支離滅裂な生物学「ルイセンコ学説」はなぜソ連で信じられたのか?

2024.03.03 Sunday

科学がまだあまり発展していない時代には、現代では考えられないような学説が堂々と主張されていました。

しかしそれなりに科学が発展した20世紀においてもそのようなことはあり、ソ連のルイセンコが主張していたルイセンコ学説がその最たるものです。

果たしてルイセンコ学説とはどのようなものなのでしょうか?

本記事ではルイセンコ学説について説明しつつ、どうしてこのような学説が受け入れられるようになったのかについて紹介します。

なおこの研究はロシア ・東欧研究 第36号2007年に詳細が書かれています。

 

旧ソ連の遺伝学をめぐる学術情報の入手過程 (jst.go.jp) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jarees2001/2007/36/2007_36_72/_article/-char/ja/

支離滅裂なルイセンコの主張

トロフィム・デニソヴィチ・ルイセンコ、彼の主張した農法は既存の生物学を根底から否定していた
トロフィム・デニソヴィチ・ルイセンコ、彼の主張した農法は既存の生物学を根底から否定していた / credit:wikipedia

ルイセンコはウクライナの農村出身の農学者です。

ルイセンコはキエフ園芸専門学校(現在のウクライナ国立生命環境科学大学)を卒業後、植物学の研究所でしがない研究員をしていました。

そんな彼が歴史の表舞台に立つのは、「春化処理」という農法を生み出したと主張した1928年です。

一般的なコムギは秋に播いて夏に収穫するというプロセスを取っており、これとは別で春に播いて夏に収穫する春播きのコムギもあります。

世界的には秋播きのコムギが主流ですが、秋播きのコムギはあまりにも冬が寒すぎる地域では栽培することが難しく、それ故ソ連では春播きのコムギが望まれていたのです。

ルイセンコは秋に播かれるコムギを低温に晒す春化処理をすることで、後天的に秋播きのコムギを春播きのコムギにすることができると主張したのです。

この農業技法は、当時の社会において重要な役割を果たしました。

1930年代初頭のソ連は大規模な飢饉に見舞われ、効率的な増産が求められていたのです。

その為ルイセンコの「秋播きのコムギを春播きのコムギに変えることのできる」という主張は、当時のソ連社会にとってとても有益なものだったのです。

またルイセンコはこの技術によって後天的な操作によっても遺伝的性質が変化すると主張し、進化論を否定しました。

秋播きのコムギと春播きのコムギは違う種類の植物であり、低温処理をしたところで種類が変わるわけではありません。

春化はあくまでコムギの環境の変化の適応能力を活かしただけであり、コムギそのものが持っていた性質が変わったわけではないのです。

その為現在ではルイセンコの主張は完全に否定されています。

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