抽象的すぎて諸説飛び交うベツレヘムの星
また学者たちは、「ベツレヘムの星」を実際の天文学的出来事と結びつけてイエスの誕生年を特定しようと試みてきました。
ベツレヘムの星とはイエスが生まれた直後に東の国に西の空にて観測されたとされる星であり、誰も見たことがない星であるとのことです。
それを観測した3人の占星学者はベツレヘムの星の方角に向かって旅を始め、その途中で先述したヘロデ大王に出会い、「新たにユダヤ人の王となる子」が生まれたことを教えてしまいます。
このベツレヘムの星については、超新星、惑星、彗星、惑星どうしの接近や会合(2つの天体が重なって見える現象)など様々な説が唱えられていますが、いまだにその正体はわかっていません。
もちろん「そんなことはなかった」とベツレヘムの星の観測自体がフィクションであると主張する学者も決して少なくありません。
しかし主要な説に1つとしては、紀元前2年6月に起こった金星と木星の会合で空に明るい光を形成した現象があげられています。
もう一つの可能性として言われているのが、紀元前7年の10月に起こった土星と木星の会合です。
これはドイツの天文学者のケプラーが提唱した説であり、今でも根強い支持者がいます。
また紀元前12年に観測されたハレー彗星なのではないかという声もあり、説はかなり分かれています。
ただ、いずれの説を採用するにしても、イエスの誕生は西暦の最初の年ではなく、自身の誕生日として大々的に祝われているクリスマスに生まれたわけでもない可能性が高いようです。
学問において研究が進んでいくにつれて物事が明らかになっていくことは多いですが、逆に研究が進んでいくにつれて曖昧になっていく現象も起こるのが歴史学の醍醐味なのかもしれません。