現在世界中で30億人がゲームをプレイしている
ゲームと遺伝子の関係を語る前に、近年のゲーム研究で判明した興味深い事実の幾つかを紹介したいと思います。
現在、世界人口は80億人を突破していますが、そのうちどのくらいがゲームをプレイしているのでしょうか?
ビデオゲームが発売された当時では、世界人口のなかでゲームに接することができる人々は極めて限られていました。
ゲーム筐体やファミコンなどの家庭用ゲーム機は最先端の技術を取り入れた高価な商品であり、アクセスできるのは先進国の裕福な人々に限られていたからです。
しかし現在、世界中で約30億人がビデオゲームに没頭しており、その数は増加の一途をたどっています。
特にヨーロッパでは、学生の60%が学校日に、70%が休日にゲームを楽しんでいるとのこと。
平均すると、ゲーマーは週に7~16時間をこのデジタルな娯楽に捧げており、コアゲーマーと呼ばれる熱心な層では、一日に4時間以上(週28時間以上)もゲームに熱中しています。
そして21世紀に入るとスマートフォンや仮想現実機器の登場により、ゲームはさらに高度でインタラクティブ(双方的)な体験へと進化しました。
これにより、ゲームは以前にも増して身近な存在となり、オンラインでのプレイが日常化しています。
朝の通勤電車の中でゲームプレイに没頭しているサラリーマンの多さを見れば、ゲームの日常化に納得できるでしょう。
同じような光景は今や、世界中で見かけることができます。
米国でもゲームをプレイする人口の割合が2003年の7.8%から2021年には14.0%へと倍増しました。
(※米国ではボードゲームも盛んに行われており、これも数値に含まれています)
それに伴いゲームに対する研究も盛んに行われるようになっており、ゲームには問題解決能力や社会性の向上に寄与するという肯定的な結果も得られています。
また高齢者がゲームをすることで、認知能力や反射能力の改善がみられるとする研究結果も報告されています。
また興味深いことに、ゲーム時間には周期性があり、20~84%の人々はゲームをする時期とそうでない時期が交互にやってくることが報告されました。
ゲームをしている時期は「たまたまハマるゲームに出会っただけ」と思ってしまいますが、周期性が存在するという結果は「たまたま」ではない何かが、人間とゲームの間に存在することを示唆しています。
一方で、過剰なプレイは精神的なストレスや睡眠障害、学業成績の低下といったゲーム障害を引き起こす可能性が指摘されています。
ゲーム障害になると①ゲームプレイ時間の制御ができない、②ゲーム最優先の生活により他の趣味が消失している、③成績低下などマイナスの影響が出てもゲームを続けてしまう、といった慢性的な症状がみられます。
また注目すべき点として、ゲーム障害も他の精神疾患と同じように、遺伝子の影響を受けている点があげられます。
英国の16 歳の双子 2,635 組を対象とした研究では、オンラインゲームに費やされた時間の39%は、遺伝的な要因によって増加していることが示されました。
5,247組の双子を対象とした「強迫的なインターネット使用」に関するオランダの研究では、強迫的なインターネット使用において、遺伝子が原因と考えられる要因は48%と報告されています。
ただこれらの研究は時間による変化を追跡しておらず、遺伝子の影響が年齢ごとにどのように作用しているかは明らかにされていません。
そこで今回、カロリンスカ研究所は、双子のサンプルを使用することで、ゲームに対する遺伝子と環境の影響が年齢を経ることにどう変化するか調べることにしました。