宇宙滞在による心身への影響は?
コノネンコ氏の記録は、宇宙滞在の負担の大きさゆえに偉業と呼ぶにふさわしいものです。
ISSでの平均滞在期間は1回のミッションにつき約6カ月で、その間、体には物理的な負荷がかかり続けます。
最も注目すべきは「骨密度の減少」と「筋萎縮」です。
これまでの研究で、宇宙にいる人間は1カ月滞在するごとに、下肢や脊椎などの重要な部位の骨密度が1〜1.5%程度減少することが分かっています。
ISSにはトレーニングルームがあり、クルーは1日2時間ほどの運動を行っていますが、それでも筋肉の減少は避けられないという。
また6カ月の宇宙滞在の悪影響から完全に回復するには数年かかり、その後も骨折リスクの上昇、勃起障害の増加、宇宙空間の放射線によるがんリスクの上昇など、様々な健康上の問題が懸念されます。
それゆえに、何度もISSミッションを行っているコノネンコ氏は超人と言えるのです。
同氏は取材に対し、ISSでは定期的に運動を続けており、身体的な健康面に問題はないと話しています。
心配なのは体だけではありません。
ISSでは常時6名のクルーのみが滞在しており、狭い空間の中で限られた仲間とだけ長い時間を過ごす必要があります。
愛する家族や友人と離れ離れの生活は心理面で多大な負荷をかけるため、精神疾患も起きやすいのです。
コノネンコ氏は取材に対し「ISSで不安や孤立は感じていない」と述べていますが、地球に戻ってきたときに毎回、自分がどれだけの時間を失ってきたかに気づくと話しています。
「家に帰って初めて、私がいない何百日もの間、子供たちは父親なしで大きく成長していることに気づくのです。この時間は二度と私の元には戻ってきません」
このようにISSでの滞在には、強い信念と不屈の精神が必要なのです。
ISSの活動も残り数年
ISSは1998年に最初のモジュールが打ち上げられて以来、NASA(アメリカ航空宇宙局)、ロスコスモス、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、ESA(欧州宇宙機関)、CSA(カナダ宇宙庁)の5つの国によって管理されてきました。
しかし現在、ロシアとアメリカの間で緊張が続いており、2024年末までにロシアはISSから撤退し、独自の宇宙ステーションを建設する意思をすでに発表しています。
また、ISS自体も任期の終わりが近づいています。
現段階では2030年までISSの運用が続けられ、その後は新しい宇宙ステーションが任務を引き継ぐだろうとNASAが発表しています。
そのため、ISSでの滞在記録の更新はコノネンコ氏で最後となるかもしれません。