mRNAワクチンは特に心筋症と心膜炎のリスクが高まった
新型コロナウイルスはこれまで世界全体で700万人近い死者を出しており、現在もさまざまな亜種が出現し続けています。
一方、これに対抗するため新型コロナウイルス感染症ワクチンも開発され、これまで135億回以上の接種が実施されて、世界人口の少なくとも70.6%が1回以上の接種を行ったと考えられています。
しかし人間が使用するあらゆる薬には必ず目的外の好ましくない効果が伴います。
生活習慣病や急性症状を含めると、薬だけでなく塩や砂糖といった食品ですら、健康リスクの主因となり得ます。
新型コロナウイルスのワクチンもまた、これまでの研究でいくつかの副反応が示されてきました。
そこで、デンマーク国立血清研究所をはじめとした国際研究チームはこの副反応の影響がワクチンの接種の利点に対して、どの程度深刻であるかを調査する研究を行いました。
この研究は、米国保健福祉省 (HHS) の疾病管理予防センター (CDC) によって資金援助されたグローバル ワクチン データ ネットワーク (GVDN) によって推進されており、世界8カ国、総勢約9900万人(99,068,901人)を対象に、新型コロナウイルスワクチンの安全性が検証された、これまでで史上最大規模の調査です。
(※GVDNはグローバル 新型コロナウイルス ワクチン安全性プロジェクト(GCoVS)の計画の一部です)。
この調査では、ワクチンを打った後42日間にみられた症状を調査し、打たなかった場合を比較しました。
たとえば胃腸にかかわるAと呼ばれる症状(症状A)があった場合、ワクチンを打った日を基準に、打った人と打たなかった人を比較して、42日間の間に症状Aが出る率を比較したのです。
もともと胃腸が弱かった人は、ワクチンを打たなくても、基準日から42日の間に症状Aを発症した可能性はあります。
研究ではワクチンを打った場合に、この症状Aが出た率を調査することで、ワクチンの影響(副反応)を調べました。
上の表においては、ChAdOx1はアストラゼネカのワクチン、BNT162b2はファイザーのワクチン、mRNA‐1273はモデルナのワクチンを示しています。
数字の背景の色は、緑なら統計上の有意差(LBCI<1)が無いこと(LBCI<1)、黄色なら統計上の有意差がある程度認められること(1<LBCI<1.5)、赤ならば統計上の有意差が顕著にみられること(LBCI>1.5)を示しています。
上の表は、ワクチンを打った人と打たなかった人の間を比較した、心筋症と心膜炎の発症率の違いを示しています。
表を見ると、ほぼ全てが黄色か赤色となっているのがわかり、ファイザーやモデルナなどのmRNAワクチンが心筋症と心膜炎に関連していることが示されています。
より詳細にみると、1回目の接種後にファイザーのワクチンを打った人は42日間で心筋症の発症率が2.78倍に増え、モデルナのワクチンを打った人はそれより多い3.48倍に増加していることが示されています。
2回目の接種ではより顕著であり、心筋症においてファイザーのワクチンでは2.86倍、モデルナのワクチンは6.10倍にも及びました。
またデータを分析すると、特に心膜炎は10代後半から20代前半までの男性において最も副反応が出る率が高かったことが示されました。
心膜炎でも同様の強い傾向がみられ、1回目の接種ではファイザーのワクチンでは1.54倍、モデルナのワクチンでは1.74倍となりました。
また3回目の接種ではモデルナのワクチンは2.64倍となっています。
ただ最も高い数値だったのは、心膜炎に対するアストラゼネカのワクチンの影響でありであり、3回目の接種に6.91倍となりました。
この結果は特に、1~2回目の接種においてファイザーやモデルナなどのmRNAワクチンでは心筋症と心膜炎のリスクが増大することが示されました。