象、来日
そして1728年6月、長崎に2匹のつがいの象が上陸しました。
2匹はそこで江戸へ向かうための準備が整うまで滞在する予定でしたが、気候や食事が合わないという理由でメス象が体調を崩し、わずか3か月後には命を落としました。
一方でオス象の方は体調を崩すことなく日本の気候や食事に馴染み、翌29年3月13日には長崎を出発して江戸に向かいました。
4月20日には京都へ入り、京都御所で中御門天皇と霊元上皇に謁見しました。
なおこのとき朝廷では「象といえども無位無官のものが天皇・上皇に謁見するのはいかがなものか」と問題になり、朝廷は象に従四位(江戸時代の武家の場合は老中などの重職に就任した大名や10万石以上の大名に与えられた位階)の官位を与え、象は「広南従四位白象」として天皇に謁見しました。
生まれて初めて象を見た皇族たちは象の姿に衝撃を覚え、
「時しあれは 人の国なる けたものも けふ九重に みるがうれしさ(かねてから興味のあった外国の獣をみることができて今日はすごく嬉しい)」中御門天皇
「めづらしく 都のきさの 唐やまと すぎし野山は 幾千里なる(珍しく象が都にいる。大陸から日本まで幾千里を超えてきたことだ」霊元上皇
とそれぞれ自身の感動を歌に残しています。そして象は京都を去り、5月25日には江戸に到着しました。
そして江戸城にて象は徳川吉宗と対面したのです。
なお吉宗は対面後に象にイノシシやイヌを立ち向かわせ、どちらの方が強いのかを確かめたといいます。