うつ病の傾向を示す顔写真でAIをトレーニングする
研究チームは、以前にうつ病だと診断されたことのある177人の参加者を対象に、AIをトレーニングしました。
最初に参加者たちは、90日の間、各人のスマホのフロントカメラ(またはインカメラ)によって、自分の写真が撮影され、うつ病の症状と関連づけられました。
この期間に参加者は、スマホのアプリを使用して、1日3回、臨床医がうつ病の検出に使用する質問票「Patient Health Questionnaire-8(PHQ-8)」に回答します。
これは「落ち込んだり、憂鬱になったり、絶望したりすることがある」といった言葉にどの程度同意するかを評価するものです。
そして参加者がアプリを通してこれらの質問に回答すると、その時の顔写真が撮影(最大5枚の連続撮影)されました。
顔写真の撮影のタイミングは参加者には知らされておらず、参加者の自然な表情が取得されました。
(参加者は撮影には同意しましたが、それがいつ行われたのかは知りませんでした。)
例えば、参加者の気持ちがひどく落ち込んでいる時に、このアプリに「絶望している」と回答すると、その瞬間の顔写真が記録されるのです。
そしてこの実験より合計12万5000枚の顔写真が得られました。
次に研究チームは、これらの顔写真を用いてAIをトレーニングしました。
このAIは、参加者の気分に対する回答と、表情(視線、目の動き、頭の位置、筋肉の硬直など)の関連性を学習しました。
またAIは、背景にも注目して学習しました。
例えば、照明の明るさ、背景に他の人が写っているかどうか、どんな場所で撮影されているか、などです。
この画像学習により、AIはうつ病を発症している人の共通点を導き出すことができます。
研究チームは1つの例として、「誰かの写真が、いつも薄暗い部屋で、しかもずっと表情の変化が見られない場合、AIはその人がうつ病を発症していると推測する可能性がある」と述べています。
確かにAIが注目する情報からは、その人の「社会との繋がりの程度」や「活動量」、「気持ちの状態」を知ることができます。
複数の写真(表情とその背景)を追うだけでも、その人が明るい表情で様々な場所に出かけ、いろんな人と交流を持っているか、それとも暗い表情でいつも布団の中に閉じこもっているかを把握できます。
そしてどちらにうつ病の傾向があるかは、深く考えるまでもありませんね。
AIはこれらの分析を、膨大な画像を用いてより詳細に行ってくれるのです。