地球の海底は240万年周期で激しくかき乱されていた
多くの大発見がそうであるように、今回の研究も始まりは別の目的を持っていました。
研究者たちは当初、温暖化よって海底流が激しくなるのか、それとも穏やかになるかを調べることを目指していました。
地球の気温と海流は深く結びついていることが以前から知られていましたが、海底を流れる海底流にかんしては観察が難しく、十分に理解されていませんでした。
飛行機が発明されるまで高高度のジェット気流が気付かれなかったように、深海に潜水したり掘削するアプローチ技術が進歩するまで、人類は海底にかんして無知だったのです。
調査に当たってはまず、世界各地の海底300カ所から採掘された深海コアのデータが収集され、過去7000万年間にわたる堆積物の蓄積パターンが調べられました。
河口付近の堆積物を調べることで、過去の川の流れがどのようなものだったかを調べられるように、海底深くの堆積物を調べることで、遥か過去の海底流がどんなものだったかを予測できます。
すると予想通り、暖かい海洋では表層部と深部がより活発に循環しており、海底の侵食や堆積物の局所的な吹き溜まりを形成していることが判明します。
熱帯地域の空気で激しい上昇流と下降流がみられるように、海が暖かい場所でも激しい流れの変化が起きていたのです。
また活発な循環が発生した場所では、堆積物の蓄積パターンに大きな変化が起きていることがわかりました。
ですが最も興味深い点は別にありました。
研究者たちが地球各地の堆積物の蓄積パターンを時系列にみたところ、地球規模でおよそ240万年ごとにパターンに大きな変化が起こり、海底流の流れも活発化していることが示されました。
さらに、この240万年ごとのメガ周期は地球で太陽放射が増加し、気候が温暖化していた時期と一致することが判明しました。
つまり240万年ごとに何かが起こり、地球が熱くなって海流の循環が増加し、そのたびに海底がかき乱されていたのです。
問題はその「何か」の正体です。