火星の影響で地球は240万年周期で太陽に接近していた
240万年ごとに地球の海底をかき乱していたのは何か?
謎を解明するため研究者たちは、同様の240万年の周期を持つ地質学的・天文学的な現象を調べました。
地球の公転軌道は太陽系の他の惑星(水星・金星・火星・木星・土星・天王星・海王星)の重力相互作用によって、常にわずかながら振動しています。
最も短い周期は、数万年~数十万年ごとに発生するものであり、ミラコビッチサイクルと呼ばれているものであり、自転軸の揺れや軌道の周期的変化が起こります。
よく見かける太陽系の図では、地球の軌道はずっと一定の円形であるように感じてしまいますが、実際には太陽系の様々な惑星の重力的影響により、地球が太陽を周る軌道は、一定の周期でその経路や軸を変化させています。
しかし近年の研究により、数百万年規模の非常に長期的な周期も存在していることが明らかになってきたのです。
そのうちの1つが、主に地球と火星の重力相互作用によって240万年ごとに発生する「グランドサイクル」です。
地球の軌道は火星の重力的影響によって離心率が変化していきます。これは非常に小さな変化ですが、イメージ的にはぐにゃぐにゃと歪む楕円のような感じです。その変化の中で、240万年周期で地球が通常より太陽に近い経路を取るようになるのです。
過去に行われた研究では、この240万年周期の太陽放射による変化が地質や化石群などの放射性同位体の比率変化などに刻まれていることも示されています。
そこで研究者たちは、この240万年ごとの天文学的周期と、今回の研究で発見された240万年ごとの堆積物蓄積パターンの周期を比較してみました。
すると、両者が見事に一致していることが判明。
そのため研究者たちは「火星と地球の重力相互作用が240万年ごとに、地球を太陽に近づけて加熱し、結果として海底流の速度を増して、最終的に堆積物の蓄積パターンが変化した」と結論しました。
地球と火星の距離は5500万~4億kmの間で変動しており、火星の重力の影響は本来はわずかです。
しかし周期の到来は地球全体を太陽に近づけるため、僅かな重力の作用でも地球全体が受け取る太陽放射は大きく変化し、海底流にも影響が及んだと考えられます。
研究者たちは火星の重力が地球に及ぼす影響をバタフライ効果にたとえており、天文学的な力の役割を解明することは、地球温暖化を理解するにあたり重要になると述べています。
(注意:研究で示された図からは、現在が5番目の周期に入っていてもおかしくないように思えますが、本研究は温室効果ガスによる地球温暖化を否定する意図でなされたものではありません)
惑星配列による僅かな重力変化でも多大な影響があることを考えると、地球環境は私たちが思っているよりもずっと繊細なものなのかもしれませんね。