日常的サディストは被害者情報を正しく認知できない
研究チームはまず、2653人の参加者を対象にオンラインでアンケートを実施し、日常的サディズムと性的暴行やいじめの被害者を非難することの関連性について調べました。
その結果、サディスティックな快楽と、共感的配慮(他者に同情や配慮を示しやすい傾向)の欠如が、被害者叩きの有意な予測因子だと判明。
しかもこの結果は、異なる文化的背景を持つ人や警察官たちの間でも同じでした。
つまり、どんな国や文化、職業の人であっても日常的サディストの傾向を持つ人は、被害者への同情心の無さや、相手を責めたりすることで得られる快感から、被害者叩きをしてしまうのです。
また別の調査では、性的暴行の被害者に対して、日常的サディズムの人たちがどのような情報を記憶しているか調べられました。
その結果、日常的サディズムの傾向が強い人は、被害者と加害者の関係や状況をきちんと記憶していない傾向にあると分かりました。
さらに、それらの情報を思い出そうとする努力も控えめでした。
つまり、日常的サディズムの人は被害者の情報を正しく把握しておらず、それゆえに被害者への同情心が薄れ、被害者を非難する傾向も強くなってしまうと考えられます。
彼らは、被害者がどれだけ理不尽な扱いを受けたか、加害者がどれほどの悪事を行ったのか十分に分かっていないのです。
だからこそ、被害者を「守る対象」と考えるどころか、自分の欲に任せて「責め立てる対象」としてしまうと考えられます。
加えて、被害者との人間関係の親密さや、事件の影響の大きさは、被害者叩きの抑制にはあまり繋がらないことも分かりました。
今回の研究はオンライン調査によって行われており、限界があります。
それでも、「被害者叩きをする人は、被害者に関連した情報を正しく認知していない」という結果は、興味深く、多くの人にとって納得できるものでしょう。
こうしたメカニズムが働いているのであれば、SNSで飛び交っている「被害者への非難」を鵜呑みにしないように気を付けるべきだと分かります。
またこの傾向を知っているなら、自分がSNSでメッセージを投稿する時や、実際に言葉を発する時にも、「まず事実を十分に把握する」ことが大切であることがわかります。