焼き立てパンの「デンプン」のマイナス面とは?
まずは焼き立てのパンに含まれるデンプンの性質について見てみましょう。
パンを焼くと、しっとりとした生地がふわふわのパンに変身しますが、このとき、小麦粉に含まれるデンプン分子が熱と水分により規則性を失い、粘性のあるデンプンへと変わります。
このように、デンプンが水と一緒に加熱されることで粘度のある糊状になる現象を「糊化(こか)」または「α化(あるふぁか)」といいます。
糊化は他に、白米を炊いたときや小麦粉をソースに加えてとろみをつけるときにも起こるものです。
そのためお米を炊飯器で炊くとベタベタとくっつく状態になりますが、それはデンプンが糊化しているためです。
糊化したデンプンは小腸で簡単に消化されやすく、体内にすばやく吸収されて、体のエネルギー源となりますが、その反面、デンプンに含まれるグルコース(糖分)を細胞に取り込みやすくしてしまいます。
グルコースが多量に吸収されると生じるのが「血糖値スパイク」と呼ばれる血糖値の急上昇です。
血糖値が急上昇すると有害物質の活性酸素が発生し、血管を傷つけ始めます。そして傷ついた血管を修復しようとして、内側の壁が厚く硬くなると、血管が詰まりやすくなるのです。
これが動脈硬化を進行させて、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める原因となります。
さらに血糖値の急上昇に反応して、血糖値を下げるためのインスリンが過剰に分泌されます。
インスリンには血中の糖分を脂肪に換えて体にため込む働きがありますが、インスリンの過剰分泌でそれが加速され、肥満にもなりやすくなるのです。
ちなみにインスリンの過剰分泌による反動で血糖値が急降下し、今度は低血糖状態になることで、食後に強い眠気を引き起こします場合があります。これはネット上で話題になる「ドカ食い気絶部」の原理とされます。
冷凍すると消化・吸収されにくいデンプンになる!
ところが、この糊化したデンプンを冷やすと、加熱で伸びてしまったブドウ糖のひもが再び絡み合って、たくさんの結び目ができ、収縮しながら消化されにくい性質を持ち始めます。
これが「レジスタントスターチ」と呼ばれる難消化性デンプンです。
レジスタントスターチは糖質ではあるものの、消化管の酵素によって分解できないので、糖分が体内に吸収されにくくなります。
これによって、レジスタントスターチは血糖値の急上昇を抑えるだけでなく、食物繊維と同じ働きをするようになります。
炭水化物や脂質、タンパク質は体内で消化され、小腸から吸収されますが、食物繊維はそもそも体内の消化酵素では分解できない成分です。
そのため、小腸を素通りして大腸にまで到達し、腸内細菌の餌となることで、腸の環境を整える「整腸作用」を発揮します。
実際にパンを冷やすことで、糊化したデンプンが難消化性のレジスタントスターチに変わることが知られています。
特にパンを冷凍すると、冷蔵したときよりも約2倍も多くのレジスタントスターチが生成されます。
では、パンやご飯を冷凍したときの健康効果は具体的にどれほどのものなのでしょうか?