運動中は競争相手の存在ややつらさとは無関係に時間の進みが遅く感じる
実験の結果、参加者たちは、運動前や運動後と比較して、運動中に「時間の経過が遅く感じられる」と判明しました。
しかも、3つの条件や、到達した地点によって、感覚に差が生じるということもありませんでした。
「できるだけ早くゴールする」という競技シーンにおいて、参加者たちは、対戦相手が近くにいてもいなくても、時間の経過を同じくらい遅く感じたのです。
もちろん、サンプルの小さい今回の実験だけでは、「競争相手がいたとしても、時間認識には影響を与えない」と断定することはできないでしょう。
参加者たちはサイクリストでも、サイクリング・トライアル経験者でもなかったため、「競争する精神」が、結果にどこまで反映されたのかも分かりません。
それでも、これまでに行われてきた様々な研究結果も含めて考えると、競争相手の存在というよりも、「主に運動行為そのものが時間認識を遅らせる」可能性があります。
また今回の実験では、もう1点、興味深い結果が出ています。
運動中、自覚的運動強度は右肩上がりで増加していましたが、その増加と、時間の経過を遅く感じることには関連性が見られませんでした。
参加者たちは、運動中に「時間の経過」を遅く感じましたが、その「時間の遅れ」の程度はどの地点でもほとんど一緒だったのです。
彼らは4kmもの道のりをできるだけ早くゴールしようと全力でエアロバイクを漕いでいるため、時間が経つにつれてどんどんきつくなりました。
しかし、「どんどんきつくなった」からといって、同じように「時間の経過もどんどん遅く感じる」わけではなかったのです。
直感的には運動で時間を遅く感じる効果は、きついから(辛い時間は過ぎるのが遅く感じる)と考えがちですが、そうした単純な理由ではない可能性があります。
とはいえ過去の研究では、「運動量の増加が時間認識の歪みを強める」という仮説も提出されており、この問題についてはまだ一貫した答えが出ているわけではありません。
研究チームは、これらの点を一層正しく理解するため、さらなる研究が必要だとしています。
いずれにしても「運動中に時間の経過を遅く感じる」ことは確かなようです。
しかしこの事実だけでは、運動することや競技の練習をすることにネガティブでつらいイメージが付いてしまいます。
エドワーズ氏は、この現象に対する詳細な点を正しく把握することで、「人々が抱く、運動中の時間認識に対するネガティブなイメージをできるだけ軽減させたい」と考えています。