なぜ「死んだふり」は効果があるのか?
死んだふりは、正式には「擬死(タナトーシス)」という用語で呼ばれます。
その一番の目的は天敵の脅威にさらされた際の捕食回避です。
野生動物の多くには、動いている動物を追いかける習性が本能的に備わっています。
これは目の前で元気に逃げ回っている獲物ほど新鮮かつ安全であり、逆に死んで動かない獲物だとすでに腐食が始まっていて、食べるのに危険が伴う可能性があるからです。
加えて、死んだふりには天敵の追撃を免れるメリットもあります。
どう考えても勝てない相手に立ち向かうのは勇敢ではあるものの、いつまでもボコスカとやられていると致命的な傷を負ってしまいかねません。
しかし、いち早く「あ、これ勝てんわ」と悟って死んだふりをすれば、相手も無駄な追撃をやめてくれる可能性があります。
そして追撃がなくなれば、わずかな隙を見て逃げ出すチャンスも生まれるわけです。この手口はゴキブリとの死闘で経験したことのある人がいるかもしれません。
死んだふりの詳しい効果について、こちらの記事をご参照ください。
自然界には色々な方法で死んだふりをする生物がたくさんいますが、研究チームは今回、特にド派手な演出をすることで有名な「ダイススネーク(学名:Natrix tessellata)」に注目しました。
ダイススネークはユーラシア大陸に広く分布し、主に川辺や湖の近くに生息して、魚やカエルなどを食べています。
全長は約1〜1.3メートルの細身で、全身の黒い斑点がサイコロの目に見えることからこの英名が付けられました。
ダイススネークは天敵の鳥に遭遇すると、毎回ではありませんが、口から血を吐きながら地面をのたうち回り、さらに脱糞して全身をウンチまみれにすることがあるのです。
これは死んだふりをする数々の動物の中でも、特にインパクトの強い演出として知られています。
そこでチームは、このド派手な演出が捕食回避の効果にどんな影響をもたらしているかを知りたいと考えました。