16歳以前からポルノに接触すると成人後の「生活満足」が低くなる?
今回の研究から示されたのは、16歳以前にポルノに触れていた参加者は、それ以降の年齢でポルノに触れた人やポルノに触れたことのない人に比べて、日常の生活満足度が有意に低くなっているという相関性です。
また、早期のポルノ接触は、成人後のポルノの使用頻度の高さに関連しており、虐待的または強制的な内容の過激なポルノをより多く受け入れやすくなることも示されました。
これは早い時期からポルノに触れているせいで、普通の内容に慣れたり飽きてしまい、より過激な性的コンテンツを求めるようになっている傾向を示唆するものです。
昨今はポルノ依存症という問題も、よく耳にする話題です。
ポルノ依存症になると、日常生活の多くの時間をポルノの検索や視聴に消費してしまったり、男性の場合はアダルトコンテツでしか興奮できなくなり、勃起不全を起こすなどの問題が指摘されています。
今回の結果がポルノ依存症に繋がると示されているわけではないので、この点には注意が必要ですが、過激なポルノを求める傾向が強まると、結果的に生活全体の満足度低下に繋がる可能性は十分にありそうです。
ただ、もう1つの重要な知見として、早期のポルノ接触と成人後の性的パートナーの数に関連性があることも示されています。
10代のうちからポルノを見始めた参加者は成人期に性交渉する人数が多くなっていたというのです。
これをポジティブな要因と見るか、ネガティブな要因と見るかは意見の割れる点です。
成人後に上手くパートナーを見つけられない人にとってはポジティブな情報に捉えられるかもしれませんが、性的パートナーが多いというのは、一般的に見て感心できることではないでしょう。
この点に関しても、早期のポルノ視聴が性的価値観に混乱を引き起こしている可能性が懸念されます。
今日の10代はさらにリスクが高い?
以上の結果から、早期のポルノ接触は、成人への成長段階において、個人の価値観や、人間関係の形成などに対しても長期の影響を与える問題だと考えられます。
そしてこれが成人後の「生活満足度の低下」を含むネガティブな影響を長期にわたって個人に及ぼす可能性も示されました。
ただこの種類の研究は、まだあまり深くは進んでおらず、今回の研究もあくまでアンケートを中心に相関性を示しただけのものです。
また研究者は、この結果を解釈する上で考慮すべき課題があると話します。
最も大きな問題点は、今回のデータが2015年に収集されたものであり、参加者はその時点から自分の記憶を遡ってアンケートに回答していることです。
参加者の平均年齢が32歳であることを踏まえると、彼らが最初にポルノに接触した年齢は2000年代の初めや、さらにもっと前の年代となるはずです。
そのため研究結果は、現代の子どもたちを取り巻く環境とは一致していないと考えられます。
性的コンテンツの消費状況は2015年以降に大きく様変わりしており、特にスマホやパソコンの普及に伴い、現在の若者たちはさらに早い時期から過激な内容を含む多くのポルノに触れる機会が多くなっています。
そうなると、今日の10代の若者たちが成人した後の影響は、ここで示された結果より深刻なものとなる可能性もあります。
そのため研究者たちは「ポルノの消費状況が変化している今こそ、若者が質の高い性教育を受け、早期にポルノにさらされることの危険性や有害性について理解することが不可欠でしょう」と話しています。
とはいえ、どのような表現からポルノ扱いするべきか、いつ頃から触れるのが適切かを判断するのは難しい問題です。
極端なポルノ規制を行えば、逆に性に消極的すぎる大人になってしまったり、性的な知識の不足からトラブルに見舞われるリスクも出てくるでしょう。
しかしいずれにせよ「あまり若いうちからエロいものを見過ぎない方がいい」のは確かなようです。