脳は迷いとセットで運動を学習すると判明
脳は迷いとセットで運動を学習すると判明 / Credit:Canva
brain

迷うのは悪いことじゃない!迷った末の決断の方が脳の学習効果が高い

2024.06.21 Friday

スポーツの試合では、プレイヤーの迷いが勝負の結果を左右すると考えられています。

テニスであれば、ドロップショットでコートの前に落とすのか、それともロブを上げてコートの奥に落とすのか悩むかもしれません。

サッカーであれば、PK戦でゴールの右か左のどちらにシュートするか迷うでしょう。

最近、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)に所属する小笠希将氏ら研究チームは、こうした迷いには意味があると報告しました。

私たちの脳には、決断の内容だけでなく、その決断に至る過程が運動として記憶されているというのです。

迷いが生じる場面を想定した練習を積み重ねるなら、本番で迷いが生じた時にも安定したパフォーマンスを発揮できるでしょう。

研究の詳細は、2024年6月11日付の学術誌『Nature Human Behaviour』に掲載されました。

迷うことにも意味がある 〜決断の迷いも含めて脳は運動を学習することを発見〜 https://www.nict.go.jp/press/2024/06/13-1.html
Decision uncertainty as a context for motor memory https://doi.org/10.1038/s41562-024-01911-x

スポーツで「迷うな!」はいつも正しい?

試合では、迷った末に決断することがあるもの
試合では、迷った末に決断することがあるもの / Credit:Canva

一瞬の判断が勝負を左右するスポーツの試合において、プレイヤーは「迷う」こともあれば、「迷わずに決断する」こともあります。

例えばサッカーのPK戦では、選手はゴールキーパーが左側に動くのを見て、確信をもって右隅にボールを蹴る場合があります。

一方で、ゴールキーパーの動く方向が分からず、確信を持てないまま右隅にボールを蹴ることもあるでしょう。

従来の意思決定や運動制御の理論では、どちらも「右隅に蹴る」という同じ動作であるため、迷いが生じたか生じないかに関わらず、「は同じ運動として指令を出している」と考えられていました。

もしそうであれば、「迷い」は完全に時間のロスであり、練習でも「迷いを捨てる」ことが大切だと言えるかもしれません。

しかし、この考えは本当なのでしょうか。

今回、小笠氏ら研究チームは、「迷った末の運動」と「迷わずに行う運動」の違いに焦点を当てた研究を行いました。

次ページ「迷った末の運動」と「迷わずに行う運動」を脳は区別していた

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

脳科学のニュースbrain news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!