フグ毒を食べたトラフグ稚魚は、腸内細菌叢が変化する
これまで、フグ毒「テトロドトキシン」は、神経伝達をブロックするだけで、細菌に対する阻害効果は無いと考えられてきました。
しかし近年、「テトロドトキシンが一部の細菌に対して増殖を阻害する効果を持つ可能性」が報告されています。
このことは、テトロドトキシンが腸内細菌にも何らかの影響を及ぼすことを示唆しています。
そこで今回、濵﨑氏らの実験では、トラフグの稚魚を対象にテトロドトキシンを混ぜたエサを与え、腸内細菌叢が変化するかどうか調べました。
「フグ毒入りのエサ」を1日2回、合計8日間与え続けたのです。
その結果、毒入りのエサを食べたトラフグの稚魚は、毒なしのエサを食べたトラフグの稚魚と比べて、腸内の半数以上の細菌種が異なっていると分かりました。
今のところ、この細菌種の違いがフグに対して良い影響を与えるのか、それとも悪い影響を与えるのかは分かっていません。
それでも、それら細菌種の違いによって、脂質代謝や糖代謝などいくつかの機能に違いが生じる可能性があると分かっています。
つまり、「フグにフグ毒を与えるとどうなるのか」という疑問に対して、現時点では、「フグは、フグ毒によって麻痺することはないが、腸内細菌叢が大きく変化する」という答えが得られているわけです。
もしかしたら毒が得られて生存に有利だからそうなったというより、フグにとって健康に良い食事を心がけていたらたまたま毒を蓄積するようになり、結果的にそれも生存に有利に働いた、という流れなのかもしれませんね。