健康ハロー効果の影響とそれを防ぐ取り組み
食品のパッケージに健康ハロー効果があることを示した研究としては、アメリカ・コーネル大学の研究者たちが2013年に発表したものが有名です。
この研究では、クッキー、ポテトチップス、ヨーグルトのラベルに「オーガニック」と表示されているだけで、人々がそれを低カロリーで脂質が少なく、食物繊維が豊富だと錯覚し、より高い金額を支払って購入しようとすることが明らかになりました。
これは健康ハロー効果を如実に示すもので、健康に良いと信じてしまう一つの要素に基づいて、その商品全体の健康的価値を過大評価してしまう危険性を示しています。
これはあくまでも一例です。「甘さ控えめ」「糖類ゼロ」といった表現など、私たちが日常的に購入する商品の中で健康ハロー効果を狙っているものが多く存在します。
ただ、これらの表現は好き勝手が許されるわけではなく、健康ハロー効果の悪影響を防ぐルールの整備も世界各国で徐々に進んでいます。
たとえば、2017年にフランスで導入され、その後、欧州各国で採用が進んでいるニュートリスコアです。
ニュートリスコアは、カロリーや糖質、塩分、飽和脂肪酸といった負の要素と、食物繊維、果物、野菜、タンパク質といったプラス要素をもとに5段階で評価され、緑色が最も健康的で赤が最も不健康であることを示します。
商品の包装の前面に表示されるニュートリスコアは、消費者が特定の言葉に惑わされず、実際の栄養価をより正しく把握できる効果が期待でき、ドイツ・ゲッティンゲン大学の研究グループが2022年に発表した研究でも、「糖分30%オフ」といった表現が引き起こす健康ハロー効果をニュートリスコアによってある程度防ぐことができると報告されています。
日本でも、ニュートリスコアに相当する仕組みの導入が本格的に検討されていて、今年7月には消費者庁で「日本版包装前面栄養表示に関する検討会」が初めて開かれました。
ただし、個々の消費者の健康状態や栄養ニーズは異なるため、ニュートリスコアのような仕組みがあったとしても、それで全てが解決というわけではありません。
極端な例ですが、肥満の人にとってはハイカロリーの商品が健康にマイナス要素となりますが、痩せている人にとっては同じ商品が栄養状態を改善するためにプラスに働くこともあります。
したがって、ニュートリスコアのような情報を参考にしつつも、最終的には消費者自身が自らに合った商品を選ぶための判断力を養うことも大切でしょう。