「温泉」での金の回収実験
温泉は金鉱山になり得るのか?
謎を解明すべく研究者たちはまず、国内の温泉に溶け込んでいる金の濃度を調べました。
熱水中の金の含有量が多ければ多いほど、回収できる量も期待できます。
すると酸性度が高く高温の温泉ほど、金が高濃度で存在することが判明します。
そこで研究者たちは酸性度の高さで知られる「秋田県の玉川温泉」で実験を行うことにしました。
玉川温泉は、世界でも珍しい塩酸が主成分の温泉で、そのpH値は1.2と食用酢やレモン汁よりもさらに強い酸性を持っています。
試験では、培養したラン藻シートに対して7か月間に渡り温泉の熱水を浴びせ続けました。
するとラン藻シートに吸着した金の濃度は、1トン当たり最大約30グラムと高濃度であり、温泉水中の他の元素(ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム等)に比べ1〜2桁高い結果となりました。
世界の主要な金鉱山での採掘量が、1トンあたり3グラムから5グラム程度であることを考えると、この結果は驚異的な数値です。
また、今回の回収試験の結果から、他の元素が溶液中に混在する場合でも、ラン藻シートは金のみを優先的に濃縮して吸着するという特性も確認されています。
以下の図はラン藻シートに結合した金(Au)の様子を顕微鏡を使って撮影したものになります。
このラン藻シートを活用することで、温泉水や鉱山廃水のような金の含有が乏しい溶液からでも、環境への負荷を抑えながら金を回収できる可能性があります。
コスト面を考えると、アクセスが厳しい海底熱水鉱床より温泉地で金を抽出していく、という方法がより現実的と言えるでしょう。
(※他にも、都市鉱山の金属を含有する工業廃液等も有力な候補にあがっています)
今回の発見は、温泉に対する私たちの見方を変えるきっかけになるかもしれません。