通勤、通学の魅力
体を動かすことは、体にも心にも良い効果がありますが、ジムやスポーツクラブで運動を続けることのハードルは高く、日々の生活における優先順位が下がってしまいがちです。
仮に通勤、通学をアクティブな手段にすることで、良い効果が得られるのであれば、一石二鳥のアプローチになり得ます。
今回、研究グループは、2001年時点で16~74歳であったスコットランドの労働者・学生の通勤、通学方法を調査した上で、2018年まで追跡しました。
なお、複数の手段を活用していた人は、そのうち、最も長い距離を移動した方法を通学、通勤の手段として扱いました(例えば電車移動が20km、徒歩移動が500mの人の場合は電車)。
分析では、年齢、性別、追跡期間前の健康状態などの影響も考慮した上で、非アクティブな手段の人たちと比べて、自転車、徒歩の人たちがどれぐらい健康であったのか、8つの健康関連項目と交通事故による入院の有無という観点から調べました。
その結果、徒歩、自転車のどちらであっても、健康効果が認められましたが、統計学的には、自転車通勤の方が多くの指標で効果が認められました(死亡、入院、メンタルヘルスの処方箋のリスクなど、8項目中7項目)。
アクティブな通勤、通学は、運動そのものを目的としなくても、運動をしたのと同じような効果が得られる点が魅力です。
新型コロナウイルスの流行以降、広まった在宅ワークには便利な側面もありますが、今回の結果を踏まえると、体を動かす機会が減り、不便になったという側面もあると言えます。
ただ、注意したい結果として、自転車通勤者は、交通事故による入院リスクが1.98倍になっていて、交通事故に遭遇するリスクも浮かび上がってきました。
ダンダス教授らも、自転車通勤者は交通事故による入院リスクが2倍になったという結果は、安全な自転車インフラの整備の必要性を裏付けるものだと述べています。
今回の研究は、ヨーロッパのスコットランドで行われたものですが、日本における自転車による交通事故のリスクはどの程度のものなのでしょうか?