ホウボウは脚先で「味」を感じていた!
実験ではまず、野生下で捕獲したホウボウを水槽に入れ、底部に敷いた砂の中に貝を隠します。
これとの比較グループとして、貝ではなく、ただ海水を入れただけのカプセルを砂中のどこかに埋めました。
その結果、ホウボウは海水の入ったカプセルには見向きもせず、貝だけを掘り起こしたのです。
これはホウボウの採餌行動が「触覚」ではなく「味覚」に頼ったものであることを示唆しています。
この真偽を確かめるべく、貝そのものではなく、貝の味がするエキスだけを入れたカプセルで実験を繰り返してみました。
貝エキスは味を感じる「味蕾(みらい)」を刺激する化学物質です。
味蕾は私たちの舌の表面にあるツブツブした突起のことで、ここで様々な味の違いを感じ分けています。
実験の結果、ホウボウは触覚としては先の海水入りカプセルと同じであるにも関わらず、貝エキスの入ったカプセルは無視することなく、確実に掘り起こすことがわかりました。
つまり、彼らは本当に脚先で味を感じていたのです。
さらにチームは顕微鏡観察により、ホウボウの脚先がヒトの舌表面の味蕾と同じように、無数の乳頭突起で覆われていることを発見しました。
実証テストで、この乳頭突起が味の素となるアミノ酸に反応したことから、味蕾と同じく「味覚センサー」として働いていることが断定されています。
また別の証拠として、チームはホウボウの近縁種である「プリオノトゥス・エボランス(Prionotus evolans)」を調査。
本種にはホウボウとは違って、脚先で砂中に潜んでいる獲物を探し当てる能力がないのですが、実際に脚先を顕微鏡で観察したところ、乳頭突起もなくツルツルした表面になっていることが確かめられたのです。
さらにチームはホウボウの脚に「味覚センサー」が形成される遺伝的な秘密をも解き明かしました。