マグマが冷えて固まる中で誕生した奇跡の鉱物
専門家たちがチョートゥー石にX線を当てて調べたところ、チョートゥー石は「アンチモン酸ビスマス」という物質だと分かりました。
その化学式は、「Bi3+Sb5+O4」です。
ロサンゼルス自然史博物館にあるチョートゥー石は自然の産物ですが、同様の化学組成を持つものは人工的に作ることができます。
天然のチョートゥー石にはビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)が含まれており、個別にはそれほど珍しくありませんが、非常に特殊な条件下で結合します。
この鉱物は、マグマが冷えて固まった岩石「火成岩」の一種「ペグマタイト」で形成されると考えられています。
具体的に言うと、まず地下深くでマグマがゆっくりと冷えて固まり、岩石になります。
そのプロセスの末期では、ガスや水分が集まって岩石の中に空洞が作られ、その中で特殊な鉱物が成長する場合があります。
空洞に満たされた水分には、鉱物の材料(周囲の岩石の残り)が溶け込んでおり、空洞内で結晶として成長します。
このようにしてできた鉱物はペグマタイト鉱物と呼ばれ、石英や長石、トパーズ、蛍石などが作られます。
そして、チョートゥー石も同様のプロセスで形成されたと考えられています。
インドとアジアのプレートが衝突するミャンマーの複雑な地質学的プロセスが、チョートゥー石の形成に必要な熱、圧力、マグマをもたらしたのです。
また、チョートゥー石の構造は、正長石や石膏などと同じ「単斜晶系」です。
画像のように、「アンチモンと酸素の八面体が形成する市松模様のシート」と「ビスマス」が平行に位置しています。
さらにチョートゥー石を構成するビスマスは非常に重い元素であり、チョートゥー石の密度は、水の8倍以上、またはルビーの2倍です。
そのため、実際に手に持ってみると、見た目よりもはるかに重く感じます。
このようにチョートゥー石は、ミャンマーの地形が生み出した特殊な希少鉱物なのです。
ちなみに、チョートゥー石が発見されたミャンマーでは、2番目に希少な鉱物である「ペイン石(Painite)」も発見されています。
もしかしたら今後も、これまでに発見されたことのない希少鉱物がミャンマーから見つかるかもしれません。