地球が耐えられる限界点を示す「プラネタリー・バウンダリー」とは?
人間が使える地球の資源には限りがあります。
水や木々、土地、石油、家畜動物を好きなだけ消費することは、地球環境のバランスを崩壊させることに繋がりかねません。
その明確な事例が大気中の温室効果ガスの急増です。
人類はテクノロジーの進歩により、化石燃料の燃焼や電気の生成、家畜の飼育、農業生産、廃棄物管理を確立してきましたが、それに伴って温室効果ガスの排出量が増大しています。
その悪影響はすでに異常気象の増加、海面上昇、生物種の減少、食糧不足などの形で表面化しています。
そこで専門家たちは2009年に、人々が地球で安全に活動できる範囲を科学的に定義するための概念として「プラネタリー・バウンダリー(惑星限界)」を策定しました。
プラネタリー・バウンダリーは、以下の9つの項目で構成されています。
2:生物多様性の損失(生物種の絶滅率)
3:生物地球化学的循環(人為的に大気中から除去された窒素の量、人為的に海洋に入るリンの量など)
4:海洋酸性化(表層海水中のアラレ石の全球平均飽和状態)
5:土地利用の変化(農地に変換された地表面のパーセンテージ)
6:淡水利用(地球規模でどれだけ淡水を使っているか)
7:オゾンホール(成層圏のオゾン濃度)
8:大気エアロゾル粒子(大気中の全体的な粒子状物質の濃度)
9:化学物質による汚染(有機物質、重金属、放射能汚染などの環境中の濃度)
それぞれに「このレベルまでは大丈夫」という安全域と、「このレベルを超えてはいけない」という限界点が設けられています。
この限界点を超えると、地球環境の安定性と回復力に不可逆的なダメージをもたらす恐れがあるとされています。
プラネタリー・バウンダリーはこれまで、2009年・2015年・2017年・2023年と定期的に評価されており、人類が現状どれだけの惑星限界を超えてしまっているかが見積もられてきました。
しかしスウェーデン・ストックホルム大学によると、2023年時点で人類は9つのプラネタリー・バウンダリーのうち、すでに6つの限界点を超えていると報告されているのです。
2023年の評価を見ると、気候変動、生物多様性の損失、生物地球化学的循環、土地利用の変化、淡水利用、化学物質による汚染はすでに安全なレベルを超えてしまっているようです。
フローニンゲン大学の地球環境学者であるクラウス・フバチェク(Klaus Hubacek)氏は、プラネタリー・バウンダリーの観点から、持続可能なレベルで地球に暮らすには何をすべきかについて研究を続けてきました。
その中で地球環境に重大な悪影響を与えていると見られたのは、やはり「温室効果ガスの排出量」でした。
そこでフバチェク氏は、温室効果ガスの人為的な排出量を効果的に削減するために、どのような人口が最も温室効果ガスを排出しているのかを地球規模で詳しく突き止めることにしました。