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「さくらみこ」のファン研究者が、画像の「くっきりさ」を数値化することに成功 / Credit:San To Chan(OIST)_絵文字と物理学 画像の「くっきりさ」を数値化する手法を開発(2024)
physics

【さくらみこと物理学】ファンの研究者が画像の「くっきりさ」を数値化

2024.12.20 17:00:44 Friday

ファンや絵師にとって「推し」の画像はできるだけ鮮明であってほしいものです。

そんな熱烈な思いが、新たな物理学の研究を生み出しました。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)に所属するサント・チャン氏は、VTuber「さくらみこ」のファンでもあります。

そんな彼は、絵師たちの習慣から着想を得て、デジタル画像の「視覚的な鮮明さ」を定量的(物事を数値や数量で表現すること)に評価する新たな手法を開発しました。

これにより、芸術作品の鮮明さが客観的かつ数値的に評価できるようになり、より品質の高い作品を生み出すのに役立つかもしれません。

研究の詳細は、2024年12月13日付の学術誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されました。

絵文字と物理学 画像の「くっきりさ」を数値化する手法を開発 https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2024/12/13/physics-and-emote-design-quantifying-clarity-digital-images
Structural stability and thermodynamics of artistic composition https://doi.org/10.1073/pnas.2406735121

35P研究者の「さくらみこ」への推し事をきっかけに論文が執筆される

近年、YouTubeなどで動画投稿やライブ配信を中心に活動するバーチャルYouTuber(VTuber)が、日本だけでなく海外でも高い人気を集めています。

VTuberグループ「ホロライブ」のメンバーである「さくらみこ」氏もその1人です。

彼女のファンは「35P(みこぴー)」と呼ばれており、さくらみこ氏は多くの35Pから熱烈な支持を得ています。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)に所属するサント・チャン氏も35Pの1人であり、過去に35Pの仲間たちとアニメーションの作成や展示を行ったこともあるようです。

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「さくらみこ」氏のファンであり、研究者でもあるサント・チャン氏 / Credit:San To Chan(OIST)_絵文字と物理学 画像の「くっきりさ」を数値化する手法を開発(2024)

彼は研究以外では、絵師(絵描き)としても活動しており、ホロライブを題材にしたインディーズゲームの開発にも携わっています。

そして、ゲームの開発者がチャン氏にいくつかの絵文字を依頼したことがきっかけで、今回の研究が始まりました。

35P兼、絵師兼、研究者であるチャン氏が、絵文字の作成をきっかけに始めた研究とは、いったいどのような内容なのでしょうか。

それは、「デジタル画像の鮮明さを数値で定義する」というものです。

画像を作成する時、そして見る時、「鮮明さ」は非常に重要です。

モザイクが掛かったようにぼんやりとした画像ではなく、「画像全体がくっきりと見える」方が人々の評価は高まります。

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鮮明な画像とぼやけた画像 / Credit:San To Chan(OIST)_絵文字と物理学 画像の「くっきりさ」を数値化する手法を開発(2024)

例えば、上の画像のどちらを自分のアイコンに用いたいか考えると、「鮮明さ」の重要性が理解できますね。

しかし、芸術作品に対する「鮮明さ」や「構造的な完成度」などの評価項目は、私たちの主観に頼りがちです。

では、これら曖昧な評価項目を、客観的なデータとして数値で表すことができるでしょうか。

チャン氏ら研究チームは、新たな方法を開発し、画像の「くっきりさ」の定量化に成功しました。

次ページ「元の画像」と「ぼかし画像」の情報量を比較し、鮮明さを定量化する手法

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