葉緑体を盗んで「光合成」ができる!
テングモウミウシは主に藻類を食べて生きています。
彼らはただ藻類をむしゃむしゃ食べるだけでなく、藻類に含まれる「葉緑体」を吸収して自分のものにするのです。
藻類から葉緑体を盗んで自らの体の組織に保存できる能力を「クレプトプラスティ(Kleptoplasty、ギリシャ語で泥棒を意味する)」と呼びます。
テングモウミウシが盗んだ葉緑体は全身を覆うセラタの中に保存されます。
これが彼らのセラタが綺麗な緑色をしている理由です。
葉緑体によって得られた緑色は単純に、テングモウミウシを環境中に溶け込ませて、天敵から身を隠すのにも役立っています。
そして葉緑体は上空から差し込む太陽の光を受けると「光合成」を行い、デンプンを含むエネルギーを体内で作り出すのです。
フィリピン・バタンガス州立大学(BSU)の海洋学者であるミグエル・アズクナ(Miguel Azcuna)氏は、次のような例え話をしています。
「私たちがサラダを食べて、その葉緑体を消化器系に保存できたとしましょう。すると太陽の下で日差しを浴びるだけで、栄養素が自然に体内で作れるのです。
これは厳しい自然界でのサバイバルに有利に働くでしょう」
このようにテングモウミウシはただ藻類を食べるだけでなく、藻類から受け継いだ葉緑体で光合成をするという、2つの方法で栄養を得ているのです。
羊にもそっくりですが、どこかクリスマスツリーのようにも見えて、この時期にぴったりですね。