火星は人類が住める環境なのか?
イーロン・マスクがCEOを務めるアメリカの航空宇宙企業・スペースX社は現在、宇宙船「スターシップ」の開発を着々と進めています。
彼らの最終目標は人類の火星移住のための”箱舟”としてスターシップを用いることです。
具体的にスペースX社は2050年までに100万人を火星に移住させる計画を掲げています。
この壮大なビジョンが実現するかどうかは今後の進捗次第ですが、そもそも火星は人類が居住できるような場所なのでしょうか?
確かに火星は太陽系の中で最も地球に似た惑星であり、移住場所として最初のターゲットにするのは理にかなっています。
まず前提として、火星と地球はともに「岩石惑星」であり、人類が居住するための大地があります。
他方で木星や土星のような「ガス惑星」はガス主体でできているため、固体の地表面を持っていません。
また火星は地球と同じように、山や谷のような地球とよく似た多様な地形を持っています。
それから火星と地球は1日の長さがほぼ一緒です。
地球の1日が24時間なのに対し、火星の1日は約24時間37分なので、生活リズムを無理なく適応させられる可能性があります。
ちなみに金星の1日は地球日で約117日、水星は約176日、木星は自転スピードが異常に速いので約10時間、土星も同じくらいで約10時間33分です。
加えて、火星の地軸は約25度傾いているため、地球と同じように春夏秋冬のサイクルがあります(地球の地軸の傾きは約23.4度)。
さらに火星の極冠が巨大な氷のシートで覆われているだけでなく、近年の研究では地下にも氷が埋まっている可能性が指摘されているため、現地で水を調達することもできるでしょう。
その一方で、火星には地球と違う部分もたくさんあります。
火星は地球よりも小さく、地球の直径が約1万2750キロなのに対して、火星の直径は約6800キロと半分ほど。
それでも十分な広さではありますが、そもそも火星には豊かな資源がないため、大規模な人数での移住は難しいでしょう。
また大気の組成も無視できません。
地球の大気は窒素が約78%、酸素が約21%で構成されていますが、火星の大気はなんと95%が二酸化炭素です。
なので呼吸装置なしで外を出歩くことはできません。
そして火星に四季があるとはいったものの、その温度は地球と大きく異なります。
火星の表面気温は夏でも平均マイナス60度で、冬場になるとマイナス120度が当たり前の状況。また強い風によって砂嵐が頻繁に起こり、このとき巻き上げられた細かい砂によって火星の空はピンク色っぽくなります。
他にも火星の重力は地球のおよそ3分の1程度しかありませんし、火星を保護する磁場が失われているため、宇宙から地上に降り注ぐ紫外線量も高くなっています。
これらを踏まえると、まず人類が生身で火星の大地に住むことは不可能であり、最初はドーム型の居住施設なり、個別の地下シェルターが不可欠でしょう。
では、このような火星環境に住み続けていると、人類の「見た目」はどのように変わってしまうのでしょうか?