脳は「何もしていない時間」に何をしているのか?
「ぼーっとしている時」や「何もしていない時間」に、ふとしたアイデアやひらめきを経験したことはありませんか。
脳が完全に休んでいるように思えるこれらの時間に、脳内で重要な働きが進行しています。
その中心的な役割を果たしているのが、デフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれる脳のネットワークです。
DMNの発見は、2001年に神経科学者マーカス・レイクルが脳の活動を測定する研究を行った際に明らかになりました。
当時、課題に取り組んでいない休憩中にも特定の脳領域が活発に働いていることが発見されました。
この現象を観察したレイクルは、脳が何もしていないように見える「デフォルト(初期設定)」の状態でも重要な活動を行っていることに着目し、このネットワークをデフォルトモードネットワーク(Default Mode Network, DMN)と名付けました。
DMNは、内側前頭前野、後部帯状皮質、海馬など、複数の脳領域から構成されます。
その後の研究で、DMNは外部刺激が少ない状況で特に活発になることや、DMNが新しいアイデアの創出や記憶の統合において重要な役割を果たすことが明らかになりました。
DMNは、特に散歩や入浴といったリラックスした時間に活発になります。
このとき、不要な情報や関連性の低いアイデアの結びつきを制限する役割を果たす前頭前野の制約が緩み、普段は抑えられている情報同士が結びつきやすくなります。
その結果、意外な視点や新たな発想が生まれる仕組みが整うのです。
さらに、DMNは「マインドワンダリング」と呼ばれる状態に入ると特に活性化します。
これは、脳が特定の目標や外部刺激に集中していないときに意識が自由に移動する状態で、記憶や経験を統合し、普段は関連性がないとされる情報同士を結びつける役割を果たします。
単純作業中に過去の出来事や未来の計画がふと頭をよぎるのは、マインドワンダリングの典型的な例です。
つまり、DMNは新しい洞察やアイデアを生み出す土台を作り、日常生活でのひらめきや創造性を支えているのです。