鳥類の磁気感覚は磁気センサーの理想値に近い
![動物の磁気感覚は量子限界に驚くほど近い性能を持つ](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2025/02/1280-x-670-px2024-2025-02-05T152859.974-900x471.jpg)
鳥類をはじめとする多くの動物が、わずかな地球磁場の変化を感じ取り、長距離移動や方向選択に活かしている現象は「磁気感覚(マグネトレセプション)」と呼ばれ、数十年来、大きな謎として研究者たちを魅了してきました。
動物行動学の視点からは、渡り鳥がいかにして地図も方位磁針もない状態で数千キロを正確に移動できるのかという問題があり、また生物物理学の立場からは、微弱な磁場信号をどのように高感度で検知しているのかという根源的な疑問が浮上します。
この「不思議な第六感」を解明しようとする試みは、化学や分子生物学、物理学など多方面の学術分野を巻き込みながら発展してきました。
一方、人類は近年、量子物理学の進歩を背景に超高感度な「量子マグネトメーター」を続々と開発しています。
量子センサーの世界では、磁気を測定する精度には「量子限界」という理論的な壁が存在することが広く知られています。
先にも述べたように、量子限界はどんなに精密に測定しても残ってしまう“揺らぎ”に起因するため、それを超えるセンサーは開発できません。
そのためもし鳥類の磁気感覚が量子的な効果を利用する生体量子センサーとして機能している場合、鳥類の磁気を検知する能力は量子限界で行き詰まりになるはずです。
そこで今回、クレタ大学の研究者たちは鳥類の磁気感覚を新たな手法で評価することにしました。