無邪気に宇宙へ信号を漏らすのは危険かもしれない
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この研究が示唆する最大のポイントは、「地球はすでに技術的な灯台として銀河に光を放っている」という事実です。
しかし、それは必ずしも良いことばかりではありません。
かつて理論物理学者スティーヴン・ホーキングは、こうした問題に対して警告を発していました。
彼からすると、地球から他の宇宙に存在する知的生命体の痕跡を発見できないのは、彼らが生存戦略として沈黙を守っているからであり、その理由はむやみにシグナルを発信することは敵対的な文明に発見されるリスクがあるからではないかというのです。
こうした考え方は「暗黒森林仮説(Dark Forest Hypothesis)」とも呼ばれています。
これは森の中で光を放つことは、自らの居場所を潜在的な捕食者に知らせる行為に等しいという考え方です。
ホラー映画で登場人物がライトを振り回しながら「おい、誰かいるのか?」とやっているのを見て、「バカ大人しくしとけよ」と思ったことのある視聴者は多いでしょう。
人類は何が潜んでいるかも分からない暗い宇宙に向けて、大声で叫び続けています。それは愚かなホラー映画の主人公のような行為なのかもしれません。
SETI研究所のソフィア・シェイク博士も、「私たちは無意識のうちに宇宙へ自己紹介を続けている。この情報をどう扱うかは、今後の科学と倫理の課題となる」と指摘しています。
12,000光年先の誰かに地球の信号が届く日
今回の研究により、人類の文明がどこまで遠い宇宙から補足されているかが、定量的に示されました。
とはいえ12,000光年という距離まで地球の信号が届くのは、12,000年後です。
もし宇宙の誰かが、地球を発見してそれに応答してくれたとしても、その応答が届くまでには気の遠くなるような時間がかかるでしょう。
この研究は色々と知的好奇心を刺激する想像を掻き立ててくれます。
もし異星文明が私たちを見つけたら、彼らに何を伝えるべきでしょうか?
宇宙に漂う人類の「技術的痕跡」が、いつの日か異星の知性に嗅ぎ分けられる日が来るのかもしれません。
そして、その瞬間こそ、私たちが“宇宙の孤独”から解放される日となるのかもしれません。