AIが夢を作り出す仕組み
見たい夢をAIが再現するためには、まず「人間が見ている映像を正確に読み取る技術」が必要です。
この分野で大きな進展を遂げているのが、大阪大学CiNetの西本伸志氏らの研究です。
彼らはfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて、人が頭の中で思い描く映像をAIがデータ化し、再構成することに成功しました。
たとえば、被験者が「猫」を想像すると、AIが脳活動データを解析し、ぼんやりとした猫の画像を生成できるのです。
この技術の精度は日々向上しており、研究では72%の確率で画像のカテゴリを正しく分類し、再構成された画像の類似性(SSIM)は0.67に達しました。
さらに、脳の「高次視覚野」の活動を解析すると、「動物」や「風景」などの抽象的なイメージも82%の精度でデコード可能であることが分かっています。
つまり、見ている夢の内容と脳活動の関係が明らかになりつつあり、それを基にAIが夢を再現する技術が発展しているのです。
さらに、2023年にはシンガポール国立大学と香港中文大学の研究チームが、fMRIデータとStable Diffusionモデルを組み合わせ、脳活動から動画を生成する技術を発表しました。
この研究では、85%の精度で正確な意味や文脈と動きを持つ動画を再構成することに成功し、これまでの静止画像の再構成を超えた大きな進展を示しました。
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脳が想像する映像の動きや変化をリアルタイムに捉えることができるこの技術は、夢の解析にも応用可能であり、夢のシミュレーション技術をさらに進化させる可能性を秘めています。
AIが夢の中のストーリーや動きまでを再構成できるようになれば、より精密な夢の再現やコントロールが実現する未来が近づいていると言えるでしょう。