ええっ!こんなところにあった股関節
股にはなかった股関節。思っていたのと違います。では、一体どこにあるのでしょう。
結論から言うと、股関節は骨盤の外側近くにあります。しかも、2ヵ所です。つまり股関節は「股」の付け根ではなく、「大腿骨が骨盤にはまっている所」なのです。

大腿骨は2本。だから股関節も2ヵ所にあるというわけですが、股なら1個だろうと思っていた股関節は、意外な場所に2個もあるのでした。
ヒトは脊椎動物で、二足歩行するように進化しました。
前脚は地面から完全に離れて両腕に。体はまっすぐに起きて、地面を踏みしめるのは2本の脚です。
二足歩行に都合がいいよう、上半身を垂直方向に支えるための骨盤は横にしっかり張り出しました。そして、左右の大腿骨は前後左右に動かしやすいよう、先端がまるでボールのような形になって骨盤にはまっています。
ボールのようなところを骨頭(こっとう)、その下、外側に張り出したところを大転子(だいてんし)、骨頭と大転子を繋ぐ部分を大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)、その下にある小さい突起を小転子(しょうてんし)といいます。

骨頭は骨盤にある寛骨臼(かんこつきゅう)という、お椀状の窪みにはまっています。寛骨臼の上側を臼蓋(きゅうがい)、下側を臼底(きゅうてい)と呼びます。
骨頭の3分の2はこの臼蓋に覆われていて、臼蓋の中をくるくると動くことで股関節が動いています。この動きは腱や筋肉が担っていて、前後左右、思った方向へ動かせる仕組みです。
ヒトは背中側にお尻が発達していますが、お腹側は俗に股と呼ばれます。木の枝がふたつに分かれたところを股、二股などといいますが、それと同じです。
そして股関節。これはこの股の部分にはないことがわかりましたね。
具体的にどこにあるかといえば、骨盤が横に一番張り出しているところから少し内側です。イメージとして股はアルファベットのVを逆さまにしたような形ですが、脚の骨は大げさに言えばアルファベットのYです。真ん中でくっついたところが膝で、その上が大腿骨。
本当に、思っていたのとだいぶ違いますね。股じゃなく、むしろ股の外側です。
どうも脚の付け根が痛いなあと思って太ももの内側をさすっても、そこに関節はありません。あるのは筋肉と脂肪だけ。関節は骨盤の内側に入り込んでいて触れないのです。
一番近いのが、椅子に座った時の太腿の付け根あたり。
股関節が股ではなく、むしろ体の外側に近い部分にあることがよくわかるのがバレエダンサーの脚の動きです。
日々の訓練の結果、バレエダンサーは脚を前後だけでなく、真横どころか頭近くまで開くことができます。これは股関節が骨盤の両側にあることをよく示しています。

柔軟に動かしても大腿骨が骨盤から外れないよう、また、しっかり動かせるよう、いくつもの筋肉が支えています。その中で一番大きな筋肉が大殿筋。これはいわゆる「おしり」です。
ちなみに股関節は英語でHip Jointといいます。おしりはHip。日本人的感覚だと股関節が後ろ側にあるような言葉のイメージです。
とはいえ、おしりというか、一番大きいおしりの筋肉である大殿筋は股関節をしっかり支えて二足歩行するのに必要な、大切な筋肉なんです。
これまで、おしりは何のためにあるのだろう?座る時のためのクッションか?と思っていた人もいるかもしれませんね。実は、ヒトの背中側に突き出したように大きく発達したおしりは、二足歩行をするためにあるのです。
どんな動物にもおしりと呼びたい部分はありますが、下半身を支え、脚で地面をしっかり踏みしめつつ前に出して歩くため、ヒトのおしりは他の動物にないほど大きくなりました(その筋肉に沿って脂肪がつくとさらに大きくなるわけですね………)。

西洋絵画の裸婦像や縄文のヴィーナスなど、溢れる生命力を現す作品のおしりは豊かな造形になっており、本来の機能とは別のイメージを持つに至っていますが、元はといえば、ヒトのおしりが大きくなったのは股関節を支えて二足歩行するためだったのです。

改めてスポーツ選手のお尻を見ると、ほれぼれするようないい筋肉をしています。特によく走る種目の選手はお尻の筋肉もよく発達します。今度スポーツ観戦の時によく観察してみてください。