ゴンドワナ大陸と有袋類の進化
ウォンバットに限らず、オーストラリア大陸の動物はユニークなものが多いですね。最終兵器がおしりのウォンバット、逃げ足が速いだけでなく、その足が強力な武器にもなるカンガルー、飛べないけれど走るのが速いエミュー、卵を産むのに哺乳するカモノハシ。
その特徴は袋の中で子育てする有袋類の多さと、卵を産んで哺乳で育てる単孔類がいること、そして飛べない鳥。それぞれユニークな特徴を持っています。

オーストラリア大陸はどの大陸とも繋がっていません。そのため、ユニークな固有の生物が進化しているのですが、では、なぜ有袋類や単孔類のようなユニークな生物がオーストラリア大陸に多いのでしょうか。
これはオーストラリアがゴンドワナ大陸から分裂してできたことに関係しています。
ゴンドワナ大陸は1億8000万年前頃(ジュラ紀中期頃)、超大陸パンゲアが分裂して生まれました。

パンゲアが分裂したことで北半球側のローラシア大陸、南半球側のゴンドワナ大陸となり、ゴンドワナ大陸は、現在のアフリカ大陸と南アメリカ大陸を含む西ゴンドワナ大陸と、南極大陸、インド亜大陸、オーストラリア大陸を含む東ゴンドワナ大陸に分裂しました。
単孔類に分類される動物は、哺乳類の初期系統から分岐した現存する特殊なグループであり、卵を産んで哺乳するという特徴を持っています。これは現代ではオーストラリア大陸に生息するカモノハシやハリモグラとして残っており、卵を産み、哺乳して育てる希少な存在です。

その後、有袋類が生まれ、その後に有胎盤類(いわゆる普通の哺乳類)が生まれたことがわかっています。
単孔類や有袋類は有胎盤類との競争に敗れました。ただ、オーストラリア大陸と南アメリカ大陸には地理的な影響で有胎盤類が侵入できなかったと考えられています。
その後、南アメリカ大陸での有袋類は生き残りに苦戦したようで、アメリカ有袋類として残っているのはオポッサム科目と少丘歯目のみ。北米大陸へは唯一、北オポッサムのみが移動して生き残っています。
ほとんどの有袋類がオーストラリアで繁栄しているのは、オーストラリアがどことも繋がらない、独立した大陸だからなのでした。そのため有胎盤類に駆逐されることなく、有袋類や単孔類が生き残ったのです。
オーストラリアとアフリカ大陸が、かつてどちらもゴンドワナ大陸だったことがよくわかるのがバオバブです。

葉のない時期には空に向かって根が生えているような、あの不思議植物バオバブは、アフリカ大陸、アフリカ大陸に寄り添っているマダガスカル、そしてオーストラリアにのみ生えている植物です。
アフリカとオーストラリアは遠く離れているのに、どうして同じようにバオバブが見られるのか。これもゴンドワナ大陸がキーになっているのです。現在、南米に見られるツノガエルもゴンドワナ系の生物です。
他のエリアにはいないユニークな生物が大陸移動に関係していることがわかると、生物を見る時の目がちょっと変わってきますね。
おしりが凶悪な最終兵器のウォンバットはオーストラリアに棲息するユニークな有袋類です。
それは、元を辿ればバオバブやカモノハシ同様、ゴンドワナ大陸に関係しています。オーストラリア大陸が、他のどの大陸とも繋がらない独立した大陸として成立したことで、多くの有胎盤類に駆逐されず独自の生存戦略で生き延び、進化した結果なのでした。
ゴンドワナ大陸からのオーストラリア大陸分裂。これがユニークな動物がオーストラリアで繁栄している、また、最終兵器が凶悪なおしりになったウォンバットの秘密だったのです。
