ロイヤルタッチを行う「裏の目的」とは?
ロイヤルタッチが定着する中で、手で触れると病を癒す力は「神の意志によって真の王にだけ遺伝する」と喧伝されるようになりました。
つまり、ロイヤルタッチは国王の血を引き継ぐ一族にだけ継承されるものであり、他の者にはロイヤルタッチはできないことを意味します。
そしてこれが人々に国王を支持させ、王政を維持するのに大いに役立ったのです。
国王や側近たちは、市民たちからの支持率が下がってくると、ロイヤルタッチの回数を増やして人気を取り戻そうとしました。
わかりやすいのが、イングランド王のチャールズ二世(1630〜1685)の例です。

彼の治世になるとイングランドでの君主政治はかなり不安定になっており、父のチャールズ一世は内戦中の1649年に処刑されました。
さらにチャールズ二世も1651年に、オリバー・クロムウェルとの戦いに敗れて、ヨーロッパに亡命しています。
その後、イングランドでは共和制が9年間続きましたが、クロムウェルが亡くなったことで体制が崩壊し、1660年にチャールズ二世が復帰して、王政復古を宣言しました。
そして彼は人気取りのため、積極的にロイヤルタッチを始め、病気の市民たちを触りに触りまくったのです。
記録によりますと、チャールズ二世は25年間の治世の中で、およそ9万2500人もの患者にロイヤルタッチを施しました。
これは平均すると1年間で3700人に触れた計算になります。
しかし一方で、ロイヤルタッチにはある問題がありました。
それは遠方に住む農民にとっては王に会いに行くのが難しかったことです。
そこで人々はとんでもない方法で、ロイヤルタッチの代わりとなるものを編み出します。