金曜日と祝日前の手術は避けた方がいい?
研究チームは、2007年から2019年にカナダ・オンタリオ州で行われた25種類の一般的な外科手術を対象に、合計で42万9691人分の患者データを分析しました。
患者は次の2つのグループに分類されました。
・週末前に手術を受けたグループ(金曜日・祝日前)
・週末後に手術を受けたグループ(月曜日・祝日後)
そして、30日後、90日後、1年後の死亡率・再入院率・合併症発生率を比較しました。
分析の結果、金曜日や祝日前に手術を受けた患者は確かに、月曜日や祝日後の平日に手術を受けた患者よりも、術後の死亡率や再入院率、合併症の発生率が有意に高いことが判明したのです。
具体的には、
・30日以内の死亡率 → 金曜日の手術で9%高い
・90日以内の死亡率 → 金曜日の手術で10%高い
・1年以内の死亡率 → 金曜日の手術で12%高い
・入院期間の延長 → 金曜日の手術は入院期間が長くなる傾向にある
などの結果が見られました。
特に事前に予定されていた計画手術ほど、週末前に行われるとこれらのリスクが増加することが示されました。
ところが意外なことに、予定外の緊急手術に関しては、週末前に行われた方が治療結果が良い傾向も見られたのです。

なぜ金曜日や祝日前になると、医療の質が落ちる傾向が見られるのか?
これについて研究者らは「休み前の金曜日には熟練した経験豊富な病院スタッフが少なくなり、専門医の確保が難しく、患者の緊急時の的確な対応などが遅れる可能性がある」ことを指摘しました。
実際に本研究でも、金曜日に手術を担当した医師は、平日に手術を担当した医師に比べて、全体的に実務経験年数が短い傾向(金曜日に手術を担当した外科医が平均14年、月曜日に手術を担当した外科医が平均17年)が見られたのです。
これらを踏まえてチームは、週末の医療体制の強化や専門医の確保を改善する必要があると述べています。
ただし、今回の調査はカナダの病院を対象としたものであり、日本にも同じことが当てはまるかどうかは分かりません。
それでも、もし手術を受ける機会があるなら、信頼できる担当医のスケジュールも考慮しながら、慎重に術日を選んだ方がいいのかもしれません。
言われてみれば週末の方が医者も肉体的に疲れているはずですから、繊細で長時間の集中力を必要とする手術は、休み明けから休み前にかけてどんどん質が悪化するのは当然ですね。