数分どころか2年間…こんなしゃっくりがあるのか

私たちが日常的に経験する「しゃっくり」は、ほとんどの場合、数分から数十分のうちに自然と治まります。
しかし、48時間を超えて続く「慢性しゃっくり」や1か月以上も途切れない「難治性しゃっくり」となると、脳や神経の疾患、代謝の異常など、思わぬ背景が隠れている可能性が出てきます。
過去には数年間ずっとしゃっくりが止まらなかったという記録もあるほどです。
一方、「好酸球性食道炎」は、アレルギー反応などが誘因となり、食道の粘膜に好酸球が多数集まって慢性的な炎症を引き起こす病気です。
若い男性を中心に、食べ物がつかえる感じや胸焼け、喉の違和感といった「食道に明らかな不調がある」とわかる症状が出るのが典型的と考えられてきました。
ところが研究が進むにつれ、「患者は必ずしも若年層だけではなく、症状にも意外な幅があるのではないか」と見直されつつあります。
実際、24歳の女性や7歳の男児で、好酸球性食道炎と慢性しゃっくりが同時に見られたまれな報告もあります。
ただし、彼らはのどの違和感など好酸球性食道炎らしい症状も併せ持っていたため、これまで「好酸球性食道炎=しゃっくり」と結びつけるには説得力が弱いと考えられてきました。
とはいえ、迷走神経などを介して食道の炎症が横隔膜に影響を及ぼす可能性は以前から指摘されています。
さらに、内視鏡では異常が見えづらい場合も多く、生検を行わなければ発見されないことが診断の遅れにつながるともいわれています。
こうした背景から「もし高齢者の長引くしゃっくりの裏に、好酸球性食道炎のような免疫トラブルが隠れているとしたら」という新たな視点が生まれました。
実際の本症例では、93歳の患者が2年もの間しゃっくりに苦しみ、筋弛緩剤やプロトンポンプ阻害薬などを含むあらゆる治療を試しても改善しきらなかった珍しい事例になります。