「助けたいのに動けない」と感じたときのヒント
研究の結果を踏まえると、社会不安がある極度の人見知りでも、状況によっては行動しやすくなることが分かります。
特に、実験で示された「損失を防ぐための行動」には心理的なハードルが低いという点がポイントです。
誰かの利益を生み出すような積極的な手助けは難しくても、「このままだと相手が困る」と考えると、比較的行動しやすくなるのです。
例えば、誰かの落としものを見たら、拾って見つけやすい場所においてあげる。道端で自転車が倒れていたら、そっと起こしておく。これらは直接会話をしなくてもできる助け合いです。
また、エレベーターやドアを押さえるといった行動も、相手が困るのを未然に防ぐシンプルな助けとなります。

こうした「自然に行える小さな行動」から始めることで、手助けをすることへの心理的な抵抗が少しずつ減らしていくことができます。
さらに、研究では「人に見られていることで、助けることが『適切』な場合、社会不安のある人は逆に行動しやすくなる」ことが示されています。
この報告は一見すると、社会不安の人は「人の目を気にしすぎるために行動しにくい」という特性に対して矛盾しているように感じますが、実際にはこの評価不安が逆の作用を及ぼすことがあるのです。
つまり、「助けるのが当然」とされる状況では、行動しないことによるネガティブな評価を避けるために、むしろ手助けをする方が心理的な負担が少なくなるのです。
例えば、職場で上司や同僚が見ている状況では、手を貸さないことで「冷たい人だと思われるかもしれない」という不安から、助ける行動をとる可能性が高まります。
このように、社会不安の人は他者の評価を気にするため、普段は行動を控えがちですが、「行動しないことで悪く思われる」という状況では、逆に手助けしやすくなるのです。、あえて人前で小さな手助けをすることで、行動のハードルを下げる練習ができます。
最初は「ドアを押さえる」「落とし物を拾う」など、考えずにできる行動から始め、次第に「簡単な声かけ」を加えていくことで、無理なく手助けの機会を増やせるでしょう。
社会不安とうまく付き合いながら、手助けする力を育てる
社会不安を持つ人は、「助けたい気持ちがあるのに動けない」ことが多いですが、少しずつ行動のハードルを下げることで、無理なく手助けができるようになります。
無理に「積極的にならなきゃ」と考える必要はありません。
あなたのペースで、「できる範囲で手を差し伸べる」ことから始めてみませんか?
社会不安があるからこそ、困っている人の気持ちに共感しやすいという長所もあります。
その優しさを大切にしながら、あなたなりの形で人と関わる方法を見つけていけるといいですね。