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脳を訓練すれば錯覚に惑わされにくくなる (3/3)

2025.03.17 22:00:15 Monday

前ページ驚愕の正答率格差! 訓練がもたらす錯覚への耐性

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専門技術は「真の視覚力」を生むのか:脳トレーニングが描く未来

今回の結果から見えてくるのは、「特定の専門分野で培われた視覚スキル」が、思いのほか汎用的に働く可能性です。

これまでの研究では、放射線科医などの専門家は「自分の領域(医療画像)」にだけ能力を発揮し、それ以外の一般的な視覚探索や場面認知にはあまり転用されないと考えられてきました。

しかし、幾何学的な視覚錯覚に対しても放射線科医グループが高い精度を示したことは、「文脈を遮断して対象に集中する」という訓練が、未知の課題でも錯覚に惑わされにくい力として働いている可能性を示唆しています。

放射線科医が日々取り組んでいる医療画像の読影は、人体の内部を2次元で捉えながら必要な情報のみを見極める、いわば「局所への集中力」と「不要情報の遮断力」が鍵となる作業です。

この習慣的な視覚戦略が、後に幾何学的錯視のように「周辺の誤情報」に惑わされない目を育てたと考えられます。

反対に、周囲の物体や背景が錯覚を誘発するわけではないシェパードのテーブル錯覚では差が見られなかったことも、文脈処理の訓練が関与していることを裏づける材料です。

さらに注目すべきは、こうした専門家の能力を一般の人に応用できる可能性です。

研究チームや他の専門家のコメントによれば、「誰でも訓練すれば錯覚に陥りにくくなる」余地は十分にあるというのです。

もちろん、医療画像のような専門的訓練を何年も積むのは現実的に難しいかもしれませんが、脳の働き方や視覚のクセを意識的に変えるトレーニングが普及すれば、私たちの日常でも「より正確に物事を見抜く」ためのヒントになるでしょう。

今後の課題としては、「どんな種類の訓練を行えば最も効果的に錯覚耐性を高められるのか」「領域ごとに訓練方法の違いがあるのか」などを明らかにしていくことが挙げられます。

たとえば胸部画像の専門家がマンモグラフィでも同様の集中力を発揮できるのか、あるいは将棋やチェスなど他分野のエキスパートが類似の錯覚耐性を持つのかといった疑問も興味深いテーマです。

今回の知見は、視覚心理学や医学教育だけでなく、広く私たちの知覚能力を再定義する上で重要な一歩であり、今後もさらなる研究が期待されます。

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