献血で「健康な血液細胞」が生まれていた
本研究では、血液幹細胞の遺伝的変化が、健康にどのような影響を与えるのかを明らかにするための実験を行いました。
チームは献血を頻繁に行う人々の血液幹細胞を調べ、その遺伝子に着目しました。
その中でも特に「DNMT3A」という遺伝子の変異に注目しています。
DNMT3Aは、血液幹細胞の成長や分化を調整する重要な役割を果たす遺伝子です。
そして解析の結果、頻繁な献血者のDNMT3Aに特定の変異が多く見られることがわかりました。
さらにこの遺伝的変異は、DNMT3Aの変異を持たない細胞よりも、赤血球の生産を促進し、健康的な血液をすばやく作るのに有利な働きをしていることが示されたのです。

チームはまた、遺伝子編集技術を用いてDNMT3Aの遺伝子変異を人工的に導入したヒトの血液幹細胞を作製し、それらを2つの異なる環境で育てました。
1:エリスロポエチン(EPO)を含む環境 – EPOは赤血球の産生を促すホルモンで、血液を一時的に喪失する献血後に増加する。つまり、献血後の環境を模倣したもの
2:炎症性物質を含む環境 – 体内で感染症が発生した際の環境を模倣したもの
実験の結果、頻繁な献血者で見られるDNMT3Aの変異を持つ細胞は、EPO環境でのみ増殖し、炎症環境では増殖しなかったことが確認されました。
一方で、白血病と関連するDNMT3A変異は炎症環境でのみ増殖し、EPO環境では増殖しなかったのです。
これにより、献血による血液の一時的な喪失には、健康的な血液幹細胞の増殖を促進する可能性があることが示されました。
今回の研究から、献血は単に人を助ける行為だけではなく、自分自身の健康にも良い影響を与える可能性があることが示唆されています。
もちろん、献血の健康への影響を確実に証明するには、より大規模な研究が必要です。
しかし定期的に献血をすることで、体がより健康な血液を作り出すように適応するという考え方は、非常に興味深いものでしょう。
中世でよく行われていた血を抜く行為は治療としては効果はなかったけど、血液の生産能力をあげるという意味では効果があった、ということ?