地球が「天然水素ガス」を作り出すプロセスとは?
水素ガスと聞くと、多くの人は化学工場や水素ステーションで人工的に作られるものを思い浮かべるかもしれません。
しかし、わざわざ人の手を借りなくとも、地球はそれ自体で大量の水素を作り出す天然の工場を持っています。
この水素の主な発生源は「蛇紋岩化(Serpentinization)」と呼ばれる化学反応です。
これは地球内部のマントル対流により、上昇してきたカンラン岩が水と接触することで起こります。
その際に天然の水素ガスを発生するのです。
特に、大陸プレートが引き裂かれる環境や、プレートが押し合って山脈が形成される造山運動の過程で、この蛇紋岩化が活発になることがわかっています。

これまで、蛇紋岩化による水素生成は主に海底のプレート境界で起こると考えられていました。
しかし今回の新たな研究では、山脈内部の方が水素が発生しやすい可能性があることが明らかになったのです。
その理由は、山脈内部の環境の方が比較的冷たく、蛇紋岩化が最も効率よく進む温度帯(200〜350℃)に長くとどまるためだと指摘されています。
さらに山脈には、大規模な断層が多く存在し、水の供給が活発であることも、水素生成の促進要因になっています。
実際に研究チームのシミュレーションでは、山脈内部では大陸プレートが引き裂かれる環境に比べて、年間の水素生成量が最大で20倍にもなる可能性があることが推定されたのです。
この発見は、山脈がこれまで見落とされていた「天然の水素貯蔵庫」になり得ることを示唆しており、エネルギー問題の新たな解決策として期待されています。