過敏性腸症候群の患者が抱える「見えない苦痛」とは
過敏性腸症候群(IBS)は、ストレスが原因で腸の動きに異常が生じる病気であり、日本人の約10人に1人が罹患すると言われています。
患者は強い腹痛や下痢、便秘などの症状に苦しみますが、検査をしても異常が見つからないことが多いと言われています。
そのため、医師や周囲の人々に理解されず、「気のせい」や「精神的な問題」だと誤解されがちです。
IBSが原因で休む必要が生じても、気を遣われるどころか、「仮病」だと非難されることさえあります。

その結果、患者は病気本来の苦しみだけでなく、社会的な孤立や精神的な負担も抱えることになります。
こうした患者の苦痛を科学的に証明し、正しく理解されるようにするため、研究チームはVR技術を用いた実験を行いました。
この研究では、VRゴーグルを使用して、被験者に現実に近いストレス状況を体験させました。
被験者は、「誰もいない教室で登壇する場面」「聴衆がいるが注目はされていない場面」そして「聴衆全員から注目される場面」の3つの状況を順番に体験しました。
その際、脳の血流変化を測定できるfNIRS(簡便に脳の活動を測定できる赤外線を使用した検査方法。従来の100分の1のコストで導入可能)を用いて脳活動を記録しました。
さらに、被験者の心拍変動や主観的なストレス評価も行い、ストレスがどのように身体に影響を与えるのかを分析しました。