偶然手に取った石ころが歴史的な「お宝」だった!

今回の舞台はイスラエル中南部の丘陵地シェフェラにある歴史的な遺跡「テル・アゼカ(Tel Azekah)」です。
アゼカの歴史は非常に古く、紀元前2000年ころには城塞都市が築かれたとされています。
またテル・アゼカは聖書の中でも重要な役割を果たしており、旧約聖書『サムエル記』の中でダビデとゴリアテが戦ったとされる伝説の場所でもあるのです。

今年3月、3歳の少女であるジヴ・ニツァン(Ziv Nitzan)ちゃんは家族と一緒に、テル・アゼカのふもとをハイキングしていました。
道中には無数の石ころが散らばっており、ジヴちゃんはひときわ気になった一つの石を手に取ったといいます。
ところが姉のオメールさんがその石を見て「普通じゃない」と気づき、父親に報告しました。
父親もそれがただの石ころではないと一目で判断し、イスラエル考古学庁の専門家にコンタクトを取ることにします。

そして詳しい調査の結果、ジヴちゃんが数多ある石ころの中から偶然手に取ったものは、約3800年前にカナン人によって作られた印章であることが判明したのです。
カナンとは現在のイスラエル、パレスチナ自治区、レバノン、シリア、ヨルダンの一部を含む地域を指します。
聖書では「乳と蜜の流れる場所」と描写され、神がアブラハムの子孫に与えると約束した土地であることから「約束の地」とも呼ばれる有名な場所です。
また、ジヴちゃんが見つけた印章は、ただの装飾品ではありませんでした。
スカラベが彫り込まれた「お守り」
ジヴちゃんの見つけた印章には、2匹のスカラベが彫り込まれていました。
スカラベは古代人によって、生命の誕生や再生の象徴として神聖視されてきた存在です。
スカラベとは生物学的にいうと「ヒジリタマオシコガネ(学名: Scarabaeus sacer)」を指しているといいます。
いわゆるフンゴロガシですね。

フンコロガシを神聖視する慣習は、古代エジプトに端を発します。
エジプト人は、フンコロガシが糞の玉を転がす様子から、太陽神が太陽を転がして移動させる姿を連想し、神格化しました。
また糞の中に卵を産み、そこから新しい命が生まれることから、「死から生命が生まれる」という再生の象徴と見なしていたのです。
こうした信仰のもと、スカラベ型の印章は一種の護符やお守りとして、王族や貴族のみならず、一般の人々にも広く用いられました。
墓や神殿、家庭からも数多く出土しており、持ち主の社会的地位や宗教的信念を示す印としても使われていたとされています。

カナン人もまた、こうしたエジプトの文化的影響を受け、自らの護符文化に取り入れていました。
ジヴちゃんが拾ったスカラベはまさにその証拠であり、古代エジプトとカナン人の間に交流があったことを裏付ける品として、非常に重要な位置づけにあります。
今回の出来事のように、歴史的なお宝は必ずしも専門家だけが見つけられるものではありません。
歴史ある遺跡を散策していれば、誰にでも過去のお宝を見つけるチャンスがあるかもしれないのです。




















