若年マウスもリスクを好む!高齢マウスとは脳回路に違いがあると判明

リスクを取る行動は、単なる性格や育ちの問題ではなく、脳の発達に由来するという考え方は近年広まりつつあります。
UCLAの研究チームは、この仮説を確かめるために、異なる年齢のマウスに対して「脅威の予測」と「報酬の選択」に関する課題を与えました。
具体的には、エサを食べている最中に不快な電気ショックを連想させるビープ音を鳴らすという実験です。
興味深いことに、若いマウスたちは音が鳴ってもできるだけ長くエサを食べ続けようとしました。
一方で、高齢のマウスは音が鳴るとすぐに行動を止め、ビープ音が止むのを待つという慎重な姿勢を見せました。
この違いが生まれるのはなぜでしょうか?

研究チームはマウスの脳に蛍光マーカーを注入し、神経活動をリアルタイムで可視化する手法を用いて脳内の変化を調べました。
その結果、思春期にあたる若年マウスでは、「背側内側前頭前野(dmPFC)」という部位の神経活動が弱いことが判明しました。
dmPFCは、人間においても判断力や自己制御、感情処理を担う重要な前頭皮質の一部であり、ここが十分に発達していないと、リスクに対する反応が鈍くなると考えられています。
加えて、このdmPFCは「基底外側扁桃体(BLA)」や「側坐核(NAc)」といった脳の他の部位と密接に連携しています。
BLAは恐怖や危険を記憶し、NAcは報酬や快感を司る領域です。
若い脳ではこれらの部位のネットワークがまだ安定しておらず、報酬に惹かれるあまり、脅威への感受性が弱まる傾向があるのです。
一方で年齢を重ねると、これらのネットワークがより洗練され、dmPFCからBLAへの制御が強まり、恐怖やリスクを重視する傾向が強くなるというのが今回の研究の大きな発見でした。
では、若者がリスクを選ぶことは悪いことなのでしょうか。