従来のサーモン養殖の限界と「AIによる次世代サーモン養殖」

魚介類は世界の30億人にとって主要なタンパク質源であり、良質な脂質も含んでいます。
中でもサーモンは人々から愛されており、サーモン養殖も盛んに行われています。
そしてサーモンの飼料要求率はおよそ「1対1」です。
つまり、サーモンの体重を1kg増やすのに必要なエサの量は1kgです。
一方、ウシは1kgの体重増加のために8~12kgのエサを必要とします。
このことを考えると、私たちが欲するタンパク質量を満たすために、サーモン養殖がいかに効果的かが良く分かります。

では、従来のサーモン養殖はどのようなものでしょうか。
ノルウェーやチリなど、サーモン養殖が盛んな地域では、巨大な海上ネットの中に数千、時にはそれ以上のサーモンを放して育ててきました。
一見して効率の良い方法に見えますが、そこには多くの問題が潜んでいました。
たとえば、密集した環境ではウイルスや寄生虫の蔓延を防ぎにくく、病気が広がりやすくなります。
また、サーモンがどれだけ餌を食べたかを正確に把握できず、餌を過剰に与えることによって海が汚染されることもあります。
さらに、健康な個体と弱った個体が混在することで管理が難しくなり、出荷の効率も低下してしまいます。

こうした課題を解決するために登場したのが、企業「Tidal AI」です。
Tidal AI社は「魚の健康と海の未来を守る」というミッションのもと、AIとコンピュータービジョンを駆使して、サーモンを個別に監視・管理するシステムを開発しました。
これにより「どれだけ餌を食べたのか」「ストレスの兆候があるか」などを把握する、かつてない精度のモニタリングが可能となったのです。
Tidalのシステムはすでに大規模なサーモン養殖をリアルタイムで管理しており、複数の養殖業者と提携して導入が進められています。